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ホームインスペクションでのシロアリ被害の確認方法
WRITER
岩井 数行
二級建築士 e-LOUPEインスペクター
建物の安全性を判断する重要な項目の1つに「蟻害の有無」があります。
蟻害とはいわゆるシロアリ被害のことを指しますが、安心して住み始めるためには建物にシロアリが発生していないかどうか、必ず確認しておくべきです。
ホームインスペクションでもシロアリ被害は大切な調査項目ですが、具体的にどのようなことをしているのかはあまりイメージがわかないのではないかと思います。
そこで今回は、ホームインスペクションにおけるシロアリ調査について詳しくご紹介していきます。
目次
シロアリ被害の調査は義務付けられている
現在、ホームインスペクションでは蟻害(シロアリによる被害)に関する調査が義務付けられています。
2013年に策定された既存住宅インスペクションのガイドラインでも、2018年の宅建業法改正に伴うインスペクション「建物状況調査」でも”蟻害”が調査項目に含まれています。
ホームインスペクションはこれらのガイドラインやフォーマットを基本に実施されますので、蟻害に関しても何かしらの調査が実施されることでしょう。
ホームインスペクションにシロアリ調査は必要?
シロアリ被害の有無は雨漏れなどと同様に気をつけておきたい項目です。特に木造物件では構造耐力に直接影響を与えてしまう可能性があり、より注意が必要です。
又、構造部材以外でもフローリングやドア枠といった箇所で被害が生じる事も多くあり、見た目や使用上の問題に大きな影響を与えます。
多くの人にとってシロアリは馴染みの薄い生き物です。そのことから「そもそもシロアリ調査は必要なの?」と思われるかも知れません。しかしシロアリ被害は決して他人事とは言い切れません。
少し前のデータですが、国土交通省補助事業「シロアリ被害実態調査報告書」(日本長期住宅メンテナンス有限責任事業組合、2013年)によると築25年以降の建物は全体の2割程度のでシロアリ被害が発生している事が判っています。
またそれより築年数が浅い物件であっても、築10年を超えると1割以上の物件で被害が生じている事も明らかになっています。
住宅の売買ではまずはシロアリ被害を疑ってみる、という意識付けが大切だと言えます。
ホームインスペクションでのシロアリ調査
ホームインスペクションにおけるシロアリ調査は、基本は床下の目視チェックとなります。
その方法として一般的には床下点検口から覗いての目視が行われます。
通常台所に床下収納庫を兼ねた点検口があったり、洗面所に床下点検口がありますのでそこから床下を覗きこみます。水廻りの配管が床下を通っている事も多く、それらの配管の確認もできるのがメリットとなります。
その様にして床下を覗き込みシロアリが通る道”蟻道(ぎどう)”が床下に作られていないかを確認するのが一般的です。
点検口から覗き込むだけですので比較的容易にでき、場合によっては住人や買主といった依頼者も自身で確認する事が出来ます。
シロアリ調査は基本調査では不十分!?
ただし、床下を覗き込める点検口は1軒の建物でせいぜい1〜2個であり、そこから覗き込むだけでは床下全面の確認は行えず、広範囲にわたって見えない箇所があることになります。
にも関わらずなぜ標準調査が覗くだけなのかというと、調査自体の難易度の高さが考えられます。
床下は特殊な環境となり、そこに潜っての調査は簡単に入れるものではありません。そういった事情から、先に上げたガイドラインや建物状況調査でも点検口からの目視による調査を基準としているのだと思います。
ただし、依頼者から要望があった際には、多くのホームインスペクション業者では床下に入り込み、床下を移動して全面調査を実施する事を、オプションサービスとして提供している事が多いです。
また、数は少ないですが元々床下に入るのを前提としている調査会社もあります。
このようなオプションサービスを利用すればインスペクターが床下に直接進入してシロアリが発生していないか、食害が起きていないかを確認してくれるでしょう。
床下基礎コンクリートや束の不備等、その他の不具合も合わせて確認してもらえますのでおすすめです。
床下だけじゃない!忘れられがちな調査部位とは?
シロアリ調査は床下に直接進入して確認することでより確実な調査結果となります。
しかし注意しなければいけないのは、床下を確認すればシロアリ被害の全てが分かるわけではないということです。
床下以外にも気をつけなければならない箇所があり、特に中古住宅ではこれらの箇所もしっかりと確認してくれる調査会社であることが望ましいです。
建物外回り
シロアリは主に床下に蟻道を作ると紹介しましたが、その理由はシロアリの性質によるものになります。
シロアリは元々は地面の中に生息しており、光・風に触れる事を嫌います。
その為、光風に触れにくい床下から蟻道というトンネルを作って上がっている事が多いのです。
その理由だと「外周り」は大丈夫と思われる方もいらっしゃると思いますが、実際は建物外側に出ている基礎の表面を上がってくる事もあります。
北側に面している基礎、基礎配置が平面的に凸凹しており入隅になっている箇所、物置やウッドデッキで隠れている箇所等です。
これらの箇所は日の当たりが悪くシロアリの好む条件になりやすいので注意が必要です。
建物外周りには比較的点検が行いやすい場所なので、専門家に頼まなくても点検自体はできます。ただし、ウッドデッキ下等難しい箇所もありますので注意が必要です。
点検時には色々注意点がありますが、シロアリの点検として覚えておいて損が無いのが、「シロアリの蟻道」に似た物です。
シロアリの蟻道自体は土で作られたトンネルで細長い塊になります。
似たようなものとしてトビイロケアリ(クロアリ)の蟻道であったり、ジグモの巣等があります。
これらはシロアリと違い建物に多大な影響を及ぼす事はありません。
事前に見分け方を確認しておくのが良いでしょう。
玄関・勝手口
玄関や勝手口は、ドア枠や巾木、上がり框(かまち)といった部位はシロアリ被害に遭いやすい部位として知られています。
玄関は靴を脱ぐ土間部分があり、室内の床より一段下がってるかと思います。この土間の下からシロアリは建物へと侵入してくるのです。
もし土間の下からシロアリが侵入していた場合、いくら床下を確認してもその存在に気づくことはできません。
玄関を確認せずにシロアリ被害の有無を判断するのはリスクがあると言えるでしょう。
浴室
玄関や勝手口で発生するシロアリ被害のメカニズムは、一部の浴室でも同じことが言えます。
該当するのは在来浴室(タイル風呂)と呼ばれる造りです。
在来浴室の場合もその床下は空間が無く、さらに普段から水を使う場所となっている事から、床下に水気がまわりやすく、よりシロアリが好む環境になっています。
反対にユニットバスの場合は比較的シロアリによる影響は受けにくい傾向にあります。
床上のシロアリはどうやって確かめる?
床上でシロアリ被害の確認は木部を硬いもの(ドライバー等)で叩くことで行います。
このことを「打診」ともいいます。
シロアリは木材の内部だけを食べる性質がありますので、見た目は綺麗な木材も既に食害されていればボロボロと崩れたり、内部が空洞となっている独特の音が聞こえる場合があります。
打診を行うことで内部で食害が起きているかどうかを判断することができるのです。
また、直接目で確認できないような隠蔽部では、「ターマトラック」というシロアリ探知機を補助的に使うことがあります。これはマイクロウェーブ(電磁波)から木材内部の僅かな動きを感知することができる非破壊シロアリ検査機です。
ただし、ターマトラックはより専門性の高い機械であることからホームインスペクションでは取り扱われていないケースが一般的です。
シロアリをしっかりと見てもらうには
建物に関する専門家の建築士や、建物状況調査を行う建物状況技術者、ホームインスペクションを行うホームインスペクターはそれぞれ、講習や試験においてシロアリに関しての知見を得ています。
しかしそれらは多くある建物に関しての知識の中での更に一項目でしかない為、シロアリに関する深い理解を得ていない場合もあります。
シロアリの専門家であるかどうかの判断基準の1つに「日本しろあり対策協会」が認定している「蟻害・腐朽検査士」という資格があります。
この資格を有しているかどうかでシロアリについて専門的な知識を得ているかどうかどうかを見極めることができます。
もしシロアリに関して気になっているようでしたら、この様な資格を有しているホームインスペクターに依頼する事を検討してみるのも良いでしょう。
まとめ
今回はホームインスペクションにおけるシロアリ調査についてご紹介してきました。
相手は非常に小さな生き物であり、思わぬ場所から侵入されてしまう可能性もあります。
また、シロアリ被害の大半は床下等、通常人間の目に届かない所で進行しているケースとなります。その為、知らないうちに被害が拡大してしまっているケースが非常に多いのです。
住み始める前に、一度しっかりと建物の調査をされることをおすすめします。
シロアリ検査は外周り等比較的容易に実施できる箇所もありますが、床下の調査といったように正確な知識や豊富な経験が必要な場所もあります。
心配している事が有ったり自分での確認が難しいと感じるようであれば、迷わず専門家にいらするのが良いでしょう。
こちらのページではホームインスペクション全体についてのご紹介もしていますのでもし興味を持っていただけたようでしたらぜひチェックしてみてください!
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