e-LOUPEの旬ネタコラム
- 新築戸建て
ホームインスペクションで分かる「断熱材」の施工状況
WRITER
岩井 数行
二級建築士 e-LOUPEインスペクター
住宅の断熱性能を向上させようという動きは国の動きを見ても明らかで、断熱材に関する興味関心は徐々に高くなってきているように感じます。
しかしその一方、断熱材の施工に不備がある建物は決して珍しくありません。
断熱材はたとえ同じ材料を使っていても施工不備があるだけで性能が50%程度低下するという事もあります。
知らず知らず損をすることがないよう、しっかりと住み始める前に確認をしておきたいものです。
今回はホームインスペクションで分かる「断熱材」の施工状況について詳しくお話ししていきます。
目次
そもそも断熱材はなぜ注目されている?
断熱材には「建物を暑さや寒さに強くする」働きがあります。住宅の断熱性能が高ければ高いほどより効率的に室温の調整ができるようになります。
エアコンなどの家電の効率を高めますので、経済的なメリットも大きくなります。
また、断熱材を建物に取り入れることには、健康面でもメリットがあります。
WHOの勧告では18℃未満だと血圧上昇・循環器系疾患の恐れがあると言われています。
更には部屋毎の温度差によるヒートショックという問題も冬場には多発しています。
最近では夏場の室内での熱中症も問題となっています。
これらの対策としてしっかりとした断熱性を持った家に住むというのが、ひとつのカギであると言っても過言ではないでしょう。
断熱材が引き起こす家のトラブル
様々なメリットがある断熱材ですが、その反面結露やカビの発生といった「断熱材が原因となるトラブル」が多いのも事実です。
実際に私がホームインスペクションを行なった建物でも、天井にシミがあったので、雨漏れの可能性を疑って小屋裏を確認したところ結露が原因だった、という事例がありました。
これは断熱材の施工が上手くできていなかった事が原因で温度差が発生して結露ができてしまったことにより起きたものでした。
もしこのような結露を放置してしまうと湿度が上昇し、カビの発生にもつながることからかえって健康面でのリスクを大きくしてしまうことにもなります。
私がこれまでホームインスペクションを行なってきた物件でも、断熱材が正しく効果を発揮するためにはどのように施工する必要があるのかを考えずに単なる作業として敷くだけ、という施工の跡を見かけることがよくありました。
断熱材には裏表があるのですがそれが逆になっていたり、断熱材と断熱材の間に隙間ができていたり、といった具合です。
なぜ断熱材は施工不良が多い?
大工さんのノウハウ不足
住宅を建てる際には、基礎は基礎屋、設備は設備屋といった様に専門業者が担当する工程がいくつかありますが、断熱材の施工に関しては大抵の場合、断熱の専門業者が施工するでは無く、その物件を担当している大工さんが施工する事が一般的です。
大工自体は住宅施工に関しての専門家ですが、例えば北海道といった冬の寒さが厳しい地域の住宅は昔から断熱性能の高い家を目指して建てており、高いノウハウを持った大工が多いです。
しかし、私たちがお伺いしている関東周辺の住宅ではそれ以外の要素が優先される事が多く、結果として断熱材施工の細かいノウハウを持っている大工さんが少ないのが現状であると思います。
各種業者に原因がある場合も
又、大工が正しい知識を持っていたとしても例えば、小屋裏を調査していると照明の裏側の断熱材がズレて施工されていることがあります。
大工さんが施工した後から設備業者が照明施工した際に照明を設置することだけに意識が向いていて、断熱材に隙間が生まれることには注意を払っていないからだといえるでしょう。
また、配管周りの断熱材についても、穴を空けて断熱材に配管を通すスペースを作ることだけを意識していて、配管と断熱材との間の隙間が塞がっておらず断熱欠損が生じているケースを見受けることもあります。
この様に様々な業種の方にも断熱材施工に関しての正しい知識を持ってもらう事が必要であり、それらを監督する方にも高い断熱に関しての知識が求められます。
結果として断熱についての知識不足から来る施工品質に対する管理の甘さが、多くの住宅で断熱材の施工不良が見つかる大きな原因となっています。
実はこれも施工不備!?
断熱材は施工しているけど隙間がある、又は断熱材を押し込んで施工してあるといったケースも注意が必要です。
断熱材は隙間無く適切に施工されて初めてしっかりとした断熱性能を発揮します。
その様なケースをしっかりと把握できるインスペクターに見てもらえれば、安心できますし、仮に不備があってもしっかりと施工店に対応をしてもらい安くなるでしょう。
断熱材の施工不備を見つけた時の対処法
まずは写真を見てもらう
断熱の施工品質は、仕様や契約では細部までしっかりと決められていないことが多く、「断熱材はこういった状態になるように施工しなければいけない」と求めることは難しいのが現状です。
とはいえ、断熱材が落下しているなど明らかな欠損部分については交渉の余地が十分にあります。
実際の写真を用意した上で相談をするようにしましょう。
完全に元通りにしてくれるとは限らない
断熱材の修繕を相談するときの注意点として、時に床が既に出来てる場合は新築施工時と同じ方法・同じ金物を使用しての取付ができないケースもあります。
一般的に床下断熱材を施工する際は、金物設置、断熱材設置、床を貼るといった手順となりますので、床を貼ってしまうと金物が設置できないからです。
その場合には別の金物やテープといった代替策にて対応する事になりますので確認しておきましょう。
まとめ
今回はホームインスペクションにおいて良く見かけることがある断熱材の施工不備についてご紹介させていただきました。断熱材の性能は建物の暑さ、寒さにも直結しますし、健康面にも影響することもあるため注意しておくべきです。
断熱材の手直しをどこまで行なってくれるかはメーカーや工務店によって基準が異なってきますが、いずれの場合でも引き渡し後の対応は難しくなってしまいますので、内覧会などのタイミングで確認をしておくことが望ましいでしょう。
近年では小屋裏への進入調査を基本メニューとして行っており、雨漏りや金具のしめ忘れなどと一緒に断熱材の状態についても調査を行っています。
ホームインスペクション全体の解説についてはこちらのページで行っていますのでもし興味を持っていただけたようでしたら是非チェックしてみてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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