e-LOUPEの旬ネタコラム
- 新築戸建て
内覧会は建築士に来てもらうべき?メリットや注意点を解説
WRITER
鳥居 龍人
二級建築士 e-LOUPEインスペクター
近年、新築住宅を売買する際には「建築士にちゃんと見てもらおう」という考え方が一般的になりつつあります。事実、e-LOUPEへの点検ご依頼の数は年々増加しています。
これは、引き渡し前に建物の専門家である建築士による検査をしてもらった方が後々のトラブルが起きないのでは?と判断する人が増えてきている証だと考えていいでしょう。
この考えはまさにその通りで、内覧会は本来引き渡し前に建物を見て周り、問題がないかのチェックや設備の説明を受けて回る場です。
建築士である私としては正しい考え方が世の中に根付いてきたこと自体、嬉しく思います。
しかしその反面で「建築士を見つける時にはここに注意してほしいな」という思いもあります。
そこで今回は、
- 内覧会に建築士を呼ぶメリット
- 建築士に同行を依頼する際の注意点
について整理していきたいと思います。
内覧会に建築士を呼ぶメリット
内覧会に建築士を呼ぶメリットを一言で表すと「建物に不具合があるかどうかを建築のプロに見てもらえる」と言う点です。
内覧会で建物を見て回るといっても、実際は全てをチェックできるわけではありません。特に「見えない場所」については住宅の知識を持っている人でないと見つけ出すことは非常に難しいでしょう。
建築士は住宅に関する様々な知識を持っているため、そんな場所でも不具合があるかどうかを判断することができます。
例えば、
- 小屋裏の金具の緩み
- 基礎のひび割れ
- 断熱材の脱落、隙間
- シーリングの充填不足
- 床下での水漏れ
などです。万が一こういった不具合がある状態で内覧会を終えてしまうと、その後の建物の劣化にも大きな影響を与えかねません。
内覧会でしっかりと調査をしておくことにより、将来の大きなトラブルの芽を摘み取ることができます。
建築士に内覧会同行を依頼する時の注意点
建築士を内覧会に同行してもらうことは建物を検査する上でとても効果的ですが、
注意しなければいけない点が3つあります。それは
- 公正公平な立場で調査を行ってくれる建築士であること
- 建物調査の経験が豊富な建築士であること
- 隅々まで調査をする契約をしておくこと
の3つです。それぞれについて詳しくご紹介していきます。
- ①公正公平な立場で調査を行ってくれる建築士であること
-
全ての建築士が、公正公平な判断を必ずしてくれるとは限りません。なぜなら自分の立場があるからです。
建築士の内覧会への同行にかかる費用を売主が負担している場合には特に多く、
「依頼主が不利になるようなことを言ってしまえば次から仕事をもらえなくなるんじゃないのか?」と買主に不利な調査をすることがあります。
海外では社会問題にもなりましたし、私自身そういう相談を業者からされたこともあります(もちろんお断りはさせていただきましたが)。
もし建築士に内覧会にきてもらうのであれば、買主自身でお願いをするのが無難です。
とは言っても、逆に過剰なまでの指摘を行う場合にも、あまりいい建築士とはいえません。
細かなところまで指摘してもらえることは買主にとって一見喜ばしいように思われるかもしれませんが、大事なのはその指摘が「適正かどうか」です。買主も売主もいい思いをしない指摘は行うべきではありません。
建築は化学式のようにきっちりとしないといけないわけではなく、誤差も許容範囲として含んでおく必要があります。修繕でも、少し気になったからとやり直しを求めていては家は建てられません。
家が建てておしまいではなくメンテナンスを行いながら長持ちさせる必要があります。そのため、買主と売主とで良好な関係を作ることも家を長持ちさせる立派な要素となります。
適正な範囲を超えて一方的に指摘、是正・・・と関係性をこじれさせては、長い目でみたら損をしてしまうリスクがあることを頭に入れておくべきでしょう。
- ②建物調査の経験が豊富な建築士であること
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建築士の資格を持っている人は知識が豊富であることに違いはありませんが、それが「戸建て住宅」に特化しているとは限りません。
例えば私と同じ一級建築士でも、マンションや高層ビルの設計に特化している人もいれば建材の「材料」の研究をしている人など、得意分野は色々あります。
それに内覧会での調査の場合、知識だけでなく「経験」も必要となります。スポーツでもいくらルールを熟知していても練習をしなければ上達しないのと同じです。
内覧会に同行をお願いする建築士は、しっかりと住宅を調査するためのプロを選ぶ必要があります。
- ③隅々まで調査をする契約をしておくこと
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実力のある建築士に買主側でお願いをしていたとしても、そもそも住宅をしっかりと隅々まで見てくれる契約をしているかどうかの確認が必要です。
「値段が安い代わりに必要最低限の調査しかしません」という契約になっている場合もあります。元々の調査範囲が狭いと万が一見えない場所で不具合が起きていたとしても「特に問題がなかった」と報告を受けることになります。
安い調査がよくないということではなく、その値段でどこまでのことをしてくれるのかを事前に把握しておくことが大切です。
まとめ
今回は内覧会に建築士の同行は必要か、とテーマでお話しをしてきました。内覧会で建物を建築士に調査してもらうことで不具合の有無を確かめ、安心して住むことができます。
しかし建築士だからといって無条件に信頼するわけではなく、しっかりと相手がどんな立場の人でどんな経歴のある人なのか、どんな契約で調査をしてくれるのか、しっかりと調べておく必要があります。
「見えないところへの徹底した追求」がe-LOUPEの基本方針です。