e-LOUPEの旬ネタコラム

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配管のホームインスペクションで見えてくる”死角”の実態

2023.03.11
鳥居

WRITER

鳥居 龍人

二級建築士 e-LOUPEインスペクター

建築事務所を経て株式会社テオリアハウスクリニックに入社。前職での現場監督経験から、施工から設計まで幅広い知識と経験を持つ。現在はその経験をもとに戸建て住宅のインスペクション業務に携わる。JSHI公認ホームインスペクター。既存住宅状況調査技術者。

こんにちは。e-LOUPEの鳥居です。

配管の不具合は”見えない場所”で発見する指摘事項の代表例です。

今回はホームインスペクションで配管をどうやって調べるのか、どういったリスクが分かるのか、詳しくご紹介していきます。

ホームインスペクションでの配管の不具合の見つけ方

まずは水を流す


ホームインスペクションにおける配管調査で一番大事なのはひとまず水を流してみることです。

洗面台や台所で水を出し、その水が排水管の隙間から漏れてこないかを目視で確かめます。

もし配管や接合部のパッキンに不具合があった場合は水が漏れてきますので、それを見て指摘事項の有無を判断します。

時間差で発覚する不具合も

ポイントは、「少し時間を置くこと」です。

配管は水を出してすぐに漏れ出さなかったとしてもじわじわと時間差で水漏れする場合があり、「水も垂れていないし問題なさそう!」と安易にチェックを終えると不具合を見逃す恐れがあるので注意が必要です。

直接触れることも重要


また、この時に実際に排水管や給水管に触れてみることも重要です。

見た目がきれいでもシンクとの繋ぎ部分がしっかりと締め付けられていないと水が漏れてくる場合があります。

特に古い住宅では排水のジャバラホースと排水管の接続はされていてもホースの長さが短い為、すぐに抜けてしまうことが起きやすい傾向にあります。

チェック時には目視の他に必ず触診を行うことがかなり重要です。

ホームインスペクションでは分からないこと

ホームインスペクションでの配管の調査は「見て触る」ことで行います。

言い換えると見ても触ってもわからない不具合は発見できない場合があります。

たとえばシンクから水がゴボゴボと上がってきてしまう配管の詰まりであったり、水を流しているはずなのに汚水の匂いが上がってくる問題などが挙げられます。

これらの場合「現状どうなっているのか」の説明はできますが、どこでどのように詰まっているのか、すぐに直るのか、などは答えられないことがあります。

そういった際はより専門的な業者(この場合は水道屋など)に相談が必要となるでしょう。

ホームインスペクションで見つかる配管の不具合

接続部からの水漏れ


配管調査で最も代表的かつ、一番気をつけるべき箇所でしょう。

前述した排水管からの水漏れは臭気の原因となりますが、給水管からの水漏れも水道料金の上昇に影響するため注意が必要です。(水道検針の方が教えてくれると思います)


ちなみに給水管の水漏れであれば一般の方でも建物外周の水道メーターをみることでおおよその判断が可能です。

誰も水を使用していないのにメーター内にある銀色の円盤が矢印方向に回るようであれば、水漏れを疑いましょう。

排水管の未固定

排水管には水を流すために適切な「勾配」が定められており、勾配が守られていないと汚水が適切に流れなかったり、配管内に汚物が詰まり逆流して室内に溢れてしまう場合があります。

たとえばトイレで使われる65~100mmの配管であれば1/100の勾配が必要です。

そうした勾配高さの調整に用いられるのが「配管固定金物」です。

しかしこの配管固定金物は指摘となることが多いです。

本来であればコンクリート土間に打ち付けて固定すべきところが配管を通しただけの状態になっていたり、高さ調節のナットが締めきれていなかったり・・・と指摘の種類は様々です。

万が一の地震などで配管が外れてしまわないよう、適切に固定して欲しいですね。

また最近の新築住宅ではキッチンに食洗機が標準で設置されているケースが増えていますが、食洗機の排水管が固定も一切されず施工されていることが多く見かけられます。

排水管がたわんでしまい逆勾配を起こしていたとしても「食洗機程度の排水じゃ詰まることない」「短い距離だから流れる」という職人さんや施工店がいます。

固定するほうがいいのは明白ですが、直したくない言い訳のように聞こえてしまい見かけるたびに少しモヤッとすることがあります。

逆勾配の配管は想定していない箇所に水が溜まってしまう為、詰まり防止などを考えると補修してほしいなと言う気持ちになりますね。

基礎の配管貫通部に隙間

床下から建物の外に配管を出す場合、基礎に穴を開けてそこに配管を通します。

この時、配管と基礎の隙間部分は虫や雨水が入り込まないようにシーリングなどで塞ぐことが一般的ですが、シーリングが適切に充填できておらず隙間が生じているケースがあります。

地面が近かったり配管が多く密集しているとどうしても綺麗にシーリングの隙間埋めが行いにくくなりがちですが、シーリングが甘いと外に出ている配管を伝って雨水が基礎内部に浸入してしまう恐れがあります。

やはり適切に埋めることが望ましいです。

配管施工時に生じた断熱の隙間


トイレやキッチンの給排水工事を行う際には床材と床の断熱材をカットして施工します。

この施工時に断熱材を大きく切り欠いてしまって配管周囲に断熱材の隙間が生じていることが多々見受けられますが、これらの断熱隙間はキッチンやトイレなどの足元冷えに関わっている可能性があります。


高気密・高断熱を謳っているような施工店の住宅でも見かける一方、建物の気密測定を行っているような施工店ではあまり見かけない為、職人さんやそれを取り仕切る現場監督さんの意識の問題が大きいのかなと感じます。

「高断熱住宅のはずなのに冷える」と住み始めてからなって欲しくはないものです。

施工時の配管ゴミが床下に放置されている

近年は床下の清掃がキチンと行われていることが多いですが、やはりまだゴミを床下に置いていってしまう職人さんもいます。

まだそんな人がいるのか思うと残念な気持ちになりますね。自分が購入した住宅の床下にゴミが隠されていたら嫌だと思います。

ちなみに私自身が住宅調査を行った際に経験した小話ですが、調査物件に伺った際に手にゴミのパンパンに入った袋を持った現場監督さんが私を迎えてくれました。

「床下調査を行うとのことでしたので床下をきれいにしておきました!」とおっしゃっていましたが、ようは私がこなければそのゴミは床下に残ったままだったんだなと感じてしましました。

施工店によっては建築中は帰りに必ず持ち場を清掃する取り組みなどを行っているところもあり、きれいな物件を引き渡してくれるんだろうなと感じるのでそういった取り組みはもっと広まっていくといいなと思います。

配管が構造材を欠いて施工されている

かなりレアケースではありますが床を支えている根太材を大きく削って配管を施工していることがあります。

構造材は幅の1/3を欠いてしまうと問題となりますが、「1/3弱削っていないので問題ないです」とする設備業者もいるので注意が必要です。

構造材を傷つけるのはやはり望ましくないため、できるだけ傷つけないことが必要となります。

リフォーム住宅などではどうしても根太を抜かなくてはいけない場合が出て来ますが、もし欠いてしまったのなら木材の補強は必須ですね。

配管トラブルは被害が進まないと気付かない場合も


配管の不具合が厄介なのは、大抵が「気づきにくい場所」で発生しているということです。

洗面所や台所のシンク下の水漏れであればすぐに気づくと思いますし、早めの対応を行うことができます。

しかし床下のような見えない場所で水漏れが発生していた場合、知らず知らずのうちに被害が拡大してしまう傾向にあります。


点検口が床下収納庫として利用されていた場合、住んでからわざわざ外して確認することは考えにくく、気づいた時には床下が水浸しになっているケースが非常に多いのです。

配管から漏れ出した水は木材のカビや腐朽、悪臭、チョウバエやボウフラの発生、シロアリ被害といった2次被害につながる可能性があります。

発生場所が2階であれば1階の天井のシミとなってしまう可能性もあるかも知れません。

やはり住み始める前に問題が発生していないか、確認しておきたいところですね。

さいごに


今回は配管に関するホームインスペクションの調査方法や事例、インスペクションの活用方法などについてご紹介してきました。

昨今では感染症対策で玄関付近に第2の手洗いを設けたり、トイレを2箇所設置している住宅が一般的となってきています。しかしシンプルに数が多ければ多いほど、どこかで不具合が起きている可能性も高くなるものです。

配管調査の重要性は世の中の動きとともに増しているのかも知れませんね。

ちなみにホームインスペクションの調査内容は、調査会社や調査プランにより異なるため、「どこまで調査をしてくれるのか」の把握が大切です。

詳しくはこちらのページでも解説していますので、もし興味を持っていただけたようでしたら是非一度ご覧ください。

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

「見えないところへの徹底した追求」がe-LOUPEの基本方針です。