e-LOUPEの旬ネタコラム
- 新築戸建て
欠陥住宅を未然に防ぐ!対策の必須知識を元現場監督が紹介
WRITER
鳥居 龍人
二級建築士 e-LOUPEインスペクター
こんにちは。e-LOUPEの鳥居です。
昔から「欠陥住宅」はテレビ番組や雑誌などのメディアでよく取り上げられます。
それらを見ていると、もちろん中には本当に悪い業者のケースもありますが、「不具合が生じるのは想像できそうだけどなぁ」というのが率直な感想である場合も少なからずあります。
今回は、欠陥住宅が作られる構造や実際の事例、買主が取るべき対策などをテーマにお話していきます。
目次
そもそも欠陥住宅とは?
欠陥住宅は大きく、
- 建築基準法に違反している
- 契約内容に反する(契約不適合)
- 1と2の両方
という3つのパターンが考えられます。
そのうち、メディアでよく取り沙汰されるのは2の契約通りに建てられた住宅かどうかです。
というのも法令には明確な基準がある事から、もし施工ミスがあればそれを簡単に証明できるケースが多いです。
一方、契約内容に適しているかどうか、双方が合意したかどうかはうやむやにできるため、違反を立証しにくいのです。
不動産業者や施工店は住宅を「売る」プロです。
たとえ後で問題が発覚したとしても、「それは契約時に合意したこと」と言いくるめられてしまうケースはとても多いのが実際のところでしょう。
言った言ってないを無くすことが非常に重要で、口頭で言われたことなどは一度メールなどで確認し、万が一の為証拠を残しておくと安心できます。
欠陥住宅が発生する構造
欠陥住宅が相次いで建てられるのは、それが「できるべくしてできた物件」だからです。
つまり、裏側には相応の理由があります。
欠陥住宅を購入して後悔しないようにするには、まずは欠陥住宅が発生する構造を知識として頭に入れておくことが重要です。
欠陥は「安さの皺寄せ」!?
欠陥住宅が発生する理由としてまず考えられるのはコスト削減です。
特に注意が必要なのは「格安」を売りにしている住宅です。
安いということは、何かしらを削っていることになりますが、それが何かを考えれば欠陥住宅が生まれる仕組みはおのずと分かってきます。
余裕のない工期
工期が短くなればなるほど人件費をはじめとした建設にかかるコストが安くなります。
低予算で購入できる住宅いわゆるローコスト住宅は経費を極限まで削減しているため、安くはなりますが工期も非常に短く、それが欠陥住宅の原因になりやすいことは容易に想像がつきます。
ちなみに工期に関する問題は買主側にも責任がある場合もあります。
例えば、急な仕様変更で壁の位置を変えてみたり、開き扉を急遽引き戸に変えたい等の要望で元々想定していなかった作りに変更する際には時間も掛かりますしミスも多くなる傾向があります。
注文住宅の場合などではよく生じる事例ではありますが、いい物件を作りたいのであれば事前に施工店に検討する時間を与え、余裕のある施工が望ましいですね。
手を抜く職人
管理費の削減も欠陥住宅を生み出す大きな原因です。
現場監督も離れ離れの物件の管理をいくつも任されていたり、10軒ほどの現場を兼任していれば管理の目は必然的に行き届かなくなるでしょう。
そこで生じるのが職人による「手抜き」です。
家造りのプロである職人はいわば手抜きのプロです。効率よく見た目を仕上げる術を知っているため、工期が迫る急なスケジュールで、施工品質のチェックを行う監督もなかなか姿を見せないとなると手抜きが発生するのは想像に難くありません。
職人不足と人件費の削減
職人不足は工期のなさにも関わってきており、「時間がないから仕事覚えたての職人にやらせてみよう」という考えが横行し、結果欠陥に繋がってしまう場合があります。
十分に育成する余裕がないまま現場を担当したり、腕のある職人の高齢化といった現象が全国的な傾向となっており、施工品質がどうしても悪化しがちになっています。
成長を見守るのは大切なことではありますが、自分の購入する家が職人の”お試し物件”に当てられてしまうのはちょっと嫌ですね。
また低予算な住宅では職人に支払われる施工費も削られています。
その中で最高のクオリティの物を作れと言われても赤字になりかけながら施工をしている為、安価な材料の使用や切り詰められた工期によって欠陥が生じてしまう場合があります。
施工費の問題は購入者には関係のない話ですが、そういった事情が絡んでいることを覚えておくと少し見方が変わるかもしれませんね。
欠陥住宅を避けるための予防策
過度なコスト削減には気をつける
やはり一番なのはリスクを正しく認識することです。
過度なコスト削減は必ず不具合という名の皺寄せが買主側にも回ってきます。
無理に建てられた物件でないか、事前に確認しておく必要があります
指摘事項が見つかりやすい場所を知る
まずは住宅のどういった場所で不具合が発生するかを知るべきでしょう。
手抜きが行われるのは必ず人目につきにくい場所です。
かがまなければ見えない窓枠や一度閉めないとわからない引き戸の裏側の壁など、施工している職人も目につきづらい不具合は見逃されてしまうことが多くあります。
住宅は一軒一軒異なりますが、傾向性を認識しておくことで、「ここは大丈夫かな?」という勘が働くようになります。
簡易的な内覧会でのチェックリストも公開していますので見ていただければ参考になると思います。
内覧会ではしっかりとチェックを行う
内覧会は建物を引き渡す前の最終確認の場です。
指摘事項は必ずといっていいほど建物のどこかに隠れています。
内装を見て終わりにするのではなく、すみずみまでチェックすることが大切です。
欠陥住宅の指摘例
これまでの調査で発見した指摘事項をいくつかご紹介します。(診断事例のページではより多くの事例をまとめています)
”床下の”雨漏り
床下で発生していた雨漏りの指摘事例です。
床下の基礎コンクリートは立ち上がり部分と底版部分が分けて施工されるケースがあります。
その場合は立ち上がりと底版の間に「止水材」と呼ばれる、水を内部に進入させない材料を内部に埋め込んで施工を行います。
しかしその止水材に隙間が生じていたり適切に埋め込まれなかった場合、外の雨水が立ち上がりと底版部分のコンクリートの打ち継ぎ部分を伝って内部に進入します。
屋根の棟金物の剥がれ
屋根と屋根のつなぎ目部分を隠す為に設置する下り棟の金物ですが、本来であれば両左右を一定間隔で釘などで固定しなければならないものです。
しかしこの物件では職人の施工漏れによって下り棟の金物が剥がれ折れ曲がっていました。
放置していればいずれ強風などで吹き飛び、隣家や自宅の壁に鉄の塊が叩きつけられていたと思われます。
雨漏りなど建物の欠陥としての問題だけでなく、近隣とのトラブルや不慮の事故につながる可能性もあったため発見できて良かったです。
基礎コンクリート打設忘れのごまかし
床下の進入調査をした際、明らかに他の基礎と違う色のひび割れまみれで指が入るほどの穴が貫通している基礎を見つけました。
表面はグズグズで明らかに強度が足りておらず、手で触れれば崩れる状態です。
報告時施工店へ確認した所、確認しますとはぐらかされてしまいましたが後日お客様から送られてきたコンクリート打設前の配筋写真内で該当指摘箇所に鉄筋が組まれていないことが判明。
基礎コンクリートを打設し忘れ箇所に練ったモルタルで基礎を作っていたのです。
後打ち施工だった旨を認めましたがすでに床が貼られてしまった状態のため基礎の打ち替えは絶望的。
一応荷重がかかる柱直下の基礎では無いため、打ち替えまで必要かどうか施工店に確認してもらっていたのですが、その途中で連絡が途絶えてしまいました。
欠陥住宅の対策となるツール
指摘事項は見えない場所で起こりやすいとお伝えしましたが、それらの中には普通に建物を見て回るだけでは絶対にわからない場所も含まれています。
そういった場所を見て回るための、私たちホームインスペクターも日頃の調査で使っている特別な機材をご紹介します。
高所カメラ(ポール)
屋根周りでは、破損やズレ、変色の状態、雨どいの詰まり、などの不具合が起こりえます。
中には職人が破損させた部材がそのままになっていることも。
屋根は非常に目視調査がとても難しい場所ですが、高所カメラとポールを用いれば全体を見渡すことができます。
鉄筋探査機
基礎の内部に耐久性を確保するための鉄筋ですが、設計通りに施工されているかというと意外と守られていません。
本来の間隔よりも少しだけ広げて施工されていたり、鉄筋と鉄筋の重ね幅が守られていない・・・といった具合です。
これは鉄筋の間隔を気にせず施工している場合もあれば、鉄筋の間隔が広ければ使う材料を相対的に減るため、施工費の削減として行われる悪質な状況もあります。
金属探知機(鉄筋探査機)を使えば、目で直接確かめる事ができない基礎内部の配筋状況を調べる事ができます。
また、余裕があるならば建設中の段階で直接施工現場で剥き出しになっている鉄筋を確かめて見るのもいいと思います。
施工後の確認が出来ない状況であれば配筋検査の写真を施工店が撮っていると思いますのでそれをもらいましょう。
含水率計
木材内部の水分の量を表す指標に「含水率」があります。
住宅の部材だとおおよそ10~20%ほどが目安で、これを上回っているとカビ・腐朽・シロアリ被害が発生しやすくなります。
「含水率系」と呼ばれる機材を用いて見た目だけでは判断できない木材の状態を確かめることができます。
また、含水率は1ヶ所を調べれば安全というわけではなく、床下や小屋裏をまんべんなく見て回ることでより本来の役割を発揮します。
レーザーレベル
欠陥住宅といえば建物の傾き・・・といったイメージを持たれている方が多いのではないかと思います。
建物の傾きを調べる機材としてレーザーレベルがあり、これを用いれば壁や床の傾きを調べることができます。
ただし、傾斜には様々な可能性が考えられます。
経年による部分的な傾斜や、測定した箇所だけ部分的に傾きが起きていることもあります。
また裏が傾斜地や擁壁上にある物件などは傾くことが稀に確認されます。
ポイントは「建物全体が同じ方向に傾いているか」ですので、建物内の全ての空間で計測を行うのがおすすめです。
さいごに
今回は欠陥住宅について傾向や対策をご紹介してきました。
目先の安さばかりにとらわれすぎると、かえって後々大きな出費や面倒なトラブルが発生することになりかねません。
やはり「安心と安全への投資」という意識を持つことが長く住むための家づくりでは大事ではないのかなと思います。
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