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地震被害に遭いやすい建物の特徴は?中古物件の確認ポイントを解説

2023.09.05
岩井

WRITER

岩井 数行

二級建築士 e-LOUPEインスペクター

建築事務所を経て2010年に株式会社テオリアハウスクリニック入社。床下調査や断熱事業での現場経験を活かし、現在は戸建て住宅インスペクション事業に携わる。JSHI公認ホームインスペクター。既存住宅状況調査技術者。蟻害・腐朽検査士。

こんにちは。e-LOUPEの岩井です。

今回は地震の被害に遭いやすい建物の特徴について建築士・ホームインスペクターの目線でお話ししていきます。

中古住宅を購入の際はぜひ参考にされてみてください。

旧耐震の建物である

建築基準法の変遷に応じ、耐震性能は古い建物ほど低く、新しい建物ほど高いです。

問題はその境目となる時期ですが、大きな節目は1981年(昭和56年)6月です。

ここを境に建築基準法は大きく変わったため、1981年6月より前の建物は旧耐震、それ以降の建物は新耐震と呼ばれています。

耐震性を考慮するならば新耐震で設計された建物が望ましいです。

注意すべきは、新耐震の建物=1981年6月の時点で完成している建物ではないということです。

新耐震の基準となっているのは1981年6月以降に確認申請を提出した建物です。

着工してから竣工までにはいくらかの時間差があり、木造住宅だったら少なくとも四か月ぐらいはかかるでしょう。

そこから始めて設計して確認申請を出した物件ですから、1〜3年先ぐらいで考えるのが確実だと思います。

また木造住宅の場合、新耐震の中でも特に安全性が高いのが2000年以降の建物です。

これは1995年の阪神淡路大震災で木造住宅がたくさん倒れる被害が発生したことを踏まえ、2000年にもう一つ上乗せする形で基準が定められたからです。

より安全性を意識するならこちらを選ばれるのがいいと思います。

ここで問題になるのがいつどの基準で建てられたのかを確かめる方法ですが、

  • 確認済証から設計の時期を確認する
  • 構造計算書から計算方法を確認する

などがあります。

しかし実際には中古住宅でこういう大事な書類を入手できることは稀で、図面すらも手に入らない場合が珍しくありません。

そこで重要なのが建物の見た目だけである程度の検討をつけるという発想ですが、それについては次の章から詳しく解説していきます。

ピロティやガレージがある

建物の壁は建物を東西と南北、それぞれの向きから建物を地震や風から守るようバランスよく配置する必要があります。

しかしピロティやビルトインガレージがあると建物を支える柱や壁を作れないため、どうしても外界の圧力に弱くなってしまいます。

特に地震の向きが建物の壁のない面の方角と一致しているほど建物がダメージを受けるリスクは大きくなります。

よく耳にするのはビルトインガレージ脇の柱やその上の小壁部の損傷などですね。

もちろん、そういった建物が必ず危険というわけではありません。

壁量計算(壁に建物への負荷に対する十分な耐力があるかの計算)や構造計算を行い、確認申請が取られており、その設計通りに作られている建物であれば安全だと言えます。

しかし先ほどもご紹介したように、安全性を証明するための書類や耐震診断を実施するのに必要な図面が手元にないケースが多いです。

特に築年数の経った物件を購入する際は、最初からビルトインガレージ自体をリスクとして踏まえるのが現実的かなと思います。

建具や内壁に変形・ひび割れがある

地震で建物が揺られると建具や内壁といった内装部分が変形してしまう場合があります。

変形が発生しているということはそれだけ地震に弱い建物であったり、すでに地震で何かしらのダメージを受けていることが考えられます。

地震の被害の遭いやすさの目安にしてみるといいと思います。

窓サッシの点検
建具の開け閉めをして壁と扉の間に隙間がないかどうか、ボードの継ぎ目に注目してクロスの切れや破れがないかを確認してみましょう。

また、和室の場合は地震や風による揺れの負担を受け続けると散り切れという、柱と壁の間に隙間が生じる現象が発生します。

もしそれらの特徴を建物のあちこちで見かけるようであれば、地震の際の揺れもかなり強いのではないかと思われます。

ちなみにですが、もし現在の状況を正確に把握する場合にはそれぞれの部屋の垂直水平を調べ、どのような変形が発生しているかを総合的に評価します。

柱の位置が1階と2階で異なる

建物の柱は上から下まで通っている場合と途中途中で分かれている場合があります。

建物の全ての柱のうち上から下まで通っている柱の割合を直下率といい、直下率が低い建物ほど地震の際に不安定になりがちです。

これは建物の2階部分の重さが1階に伝わりにくくなるためです。


震災で1階部分が潰れて2階部分が残っている建物の写真を見たことがあるのではないでしょうか。

一度図面を見て柱の位置を確認してみましょう。

また、もし図面が手元にない場合に外観だけで直下率を簡単に確かめる方法として「窓の位置の確認」があります。

窓の位置が1階と2階で揃っているようであれば柱の位置も揃っているため直下率が高く、地震にも強くなります。

壁の量が少ない・アンバランス

もし窓の位置を確認するときは、それと同時に窓の横に壁があるかどうかもチェックするようにしましょう。

窓と玄関や勝手口などが横続きになっていて壁がない建物は避けた方がいいと思います。

また建物によっては日射などの都合で1階よりも2階が小さく作られている場合がありますが、2階の外壁ラインの下に窓があるような建物も直下率が悪いのであまりおすすめできません。

更にもう1つポイントになるのが建物全体をぐるっと見て回った時のそれぞれの面の窓と壁のバランスです。

東西南北の向かい合った同士で窓と壁の量はある程度同じであることが望ましく、バランスが悪いと地震の際に建物がねじれて壊れてしまうリスクが大きくなります。

これは新耐震の建物でも同じなので注意しておいた方がいいと思います。

建物の形がL字やコの字

建物の形はデコボコしていないことが望ましいです。

特に避けた方がいいのはL字やコの字のような形で、その隅々や接合部で地震の被害を受けやすくなります。

これは地震に対して1つの建物の中で強く揺れる場所とあまり揺れない場所が同時に発生するためです。

建物の形は正方形に近い四角であることが理想です。長方形であったとしても細長いものは避けることをおすすめします。

リフォームをしている

リフォーム済物件の場合、そのリフォームは構造への配慮をしながら行われたのか、建築の知識があるちゃんとした業者が行ったのか、見た目のキレイさに惑わされず冷静に判断する必要があります。

リフォーム前は建物がどのような状態だったか、できる限り確認しておくのが望ましい

私がこれまで調査をしてきた建物の中にも、リフォーム前の図面と比較してみると耐力壁の筋交がなくなっていたり、シロアリ被害を覆い隠すように内装だけが張り替えられていたり、そういう事例が少なからずありました。

やはり図面との比較は行うことが望ましいですし、見えない床下や天井裏がどのような状態になっているのかも細心の注意を払うべきでしょう。

さいごに


今回は地震被害に遭いやすい建物の特徴についてご紹介してきました。

安さが売りの中古住宅ですが、安全性は確保されているのか、建物の現在の状態をどう評価すべきなのか、修繕や補強にはどれくらいの費用がかかるのか、それは購入費に見合った額面なのか、しっかり考える必要があります。

ぜひ後悔のない住宅購入に役立てていただけると幸いです。

最後までお読みくださりありがとうございました。

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