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なぜホームインスペクションで後悔するのか|よくある事例と要注意ポイントを解説

2025.01.21
鳥居

WRITER

鳥居 龍人

二級建築士 e-LOUPEインスペクター

建築事務所を経て株式会社テオリアハウスクリニックに入社。前職での現場監督経験から、施工から設計まで幅広い知識と経験を持つ。現在はその経験をもとに戸建て住宅のインスペクション業務に携わる。JSHI公認ホームインスペクター。既存住宅状況調査技術者。

住宅購入時に抱える不安を解消するために、近年「ホームインスペクション(住宅診断)」が注目されています。しかしその一方で「ホームインスペクションで後悔した」「依頼しなきゃよかった」という声があるのも事実です。

ホームインスペクションとは、建築の専門家が検査に同行し、適切な施工が行われているかを調査してくれるサービスです。「後から嫌な思いをしたくない」「安心して新生活を始めたい」という思いから、中古・新築を問わず物件購入時にホームインスペクションの利用を検討する方が増えています。

第三者の専門家による診断は一見安心できそうに思えますが、なぜ後悔する人がいるのでしょうか?
ここではホームインスペクションで後悔した事例を紹介し、その原因と後悔しないためのポイントを詳しく解説します。

ホームインスペクションを依頼して後悔した事例

当社に依頼される方の中にも「以前依頼したインスペクションで失敗してしまって…」というご相談をいただくことがあります。ここではお客様の声をもとに、ホームインスペクションを依頼した結果、後悔したという事例を6つご紹介します。

ホームインスペクターが経験不足・知識不足だった

専門知識や経験の不足した担当者に依頼した結果、重要な不具合を見逃されてしまった事例があります。具体的には、費用を抑えようと安価なインスペクターを選んだところ、実は資格を持っておらず、建築に関する知識や経験が十分でない人が調査を担当していたというケースです。

この背景には、無資格でもホームインスペクションが行える現状があります。当たり前ですが、知識や経験が少ないと不具合の見落としや判断ミスが発生しやすくなります。見逃された不具合が後に重大な欠陥として問題になることもあるため、インスペクターの人選は重要になってきます。

信頼できるインスペクターの選び方は、このコラムの後半部分で詳しく紹介しています。

床下や屋根裏調査が期待した内容と異なっていた

床下や屋根裏の調査はオプションとして提供されることが多いにも関わらず、不具合が多く見つかる場所でもあるため、専門家にしっかり見てもらいたい部分です。そのため調査内容に不満を感じて、再度依頼される方も少なくありません。

特に多いのが、隅々まで調べてくれると思っていたのに、実際には点検口から覗くだけだったというケースです。

当社にも、点検口からの確認だけで「問題なし」とされたことに不安を感じ、再度依頼されたお客様がいらっしゃいました。その際屋根裏の進入調査をしたところ、点検口からは確認できない場所の雨漏りを発見したことがあります。

(画像)点検口からの確認だけでは発見できない不具合がある。

(写真)進入調査によって見つかる不具合も少なくない。

コミュニケーション不足による誤解があった

依頼者が期待していた調査と実際に行われた住宅調査が異なり、後悔することがあります。例えば、「屋根の状態は登って直接確認してくれると思っていた」や、「雨漏りが発生していることを伝えたので、散水試験をしてくれると思っていた」などがよくあります。

上記の例に関しては、実際のところほとんどのインスペクターは屋根に登らず、散水試験も行いません。一般的には、目視やサーモグラフィ(赤外線カメラ)などを使用して調査します。

こうした誤解が生じる原因として、インスペクターの説明不足や、依頼者が期待する内容が明確に伝わっていないことが挙げられます。これらは両者間のコミュニケーション不足から生じることが多いため、事前に確認することが大切です。

実施してほしい調査が明確にある場合は、調査項目に含まれているのか確認をとりましょう。

調査で不具合が見つからず、費用が無駄に思えた

費用をかけて調査したのに、問題が見つからなかったことで「損をした」と感じる方もいます。
ホームインスペクションの理想的な結果は、何の不具合もない「問題なし」という状態です。不具合があれば修繕交渉や手続きなど多少の手間はかかってしまうため、なにもないのが一番です。

ホームインスペクションに対して、将来のトラブルを避けるための投資として捉えることができるかがポイントになってきます。

仲介業者や施工店との関係が悪化した

ホームインスペクションを依頼して不具合が見つかったが、その後の施工店の対応がそっけなくなり「怒らせてしまったのではないか」と悩むケースもあります。実際「新築でインスペクションは普通しませんよ」「気にしすぎですよ」などとインスペクションに対して否定的な業者がいるのも事実です。

しかし「高額な買い物だから、購入時に安心したい」というのは至極当然で一般的な考えです。業者との関係性を気にするのも大切ですが、それ以上に、購入後に安心して暮らせる環境を手に入れることを優先するべきではないでしょうか。

インスペクションはただ実施するだけではなく、結果を冷静に活用し、施工店や仲介業者と丁寧に話し合うことで、双方が納得できる解決策を見つけることが大切です。

契約前に依頼しておけばよかった

ホームインスペクションを依頼するベストなタイミングは、売買契約の締結前です。その理由として、契約前に不具合が見つかれば購入を見送ることができるということが挙げられます。

しかし、現実的には不動産会社から「契約前にインスペクションを依頼すると売主が嫌がる」「契約前にインスペクションをする人はほとんどいません」といった売主側の都合から、契約後や引き渡し後にインスペクションを依頼するケースが多いのが現状です。

そのため契約後のインスペクションで大きな不具合が発見され、「契約前に調査しておけばよかった」と後悔する方も少なくありません。可能であれば契約前にインスペクションを実施できるよう、不動産会社に交渉してみましょう。

ホームインスペクションを利用しなくて後悔した事例

ホームインスペクションを利用して後悔した人がいる一方で、実際には利用せずに住宅を購入したことで後悔した人の方が多いのが現状です。
ここでは、インスペクションを利用しなかったことで後悔した事例を5つご紹介します。

引き渡し後に重大な欠陥が発覚した

とある買主は、「ホームインスペクション」というサービスを知らず、施主検査では現場監督や仲介業者から「問題なし」と太鼓判を押され、そのまま新築住宅を購入しました。しかし、住み始めてすぐにカビの臭いが漂い始め、不安を感じてホームインスペクションを依頼したところ、引き渡し後に多くの不具合が発見することになります。

検査の結果、ユニットバスの排水管が適切に接続されておらず漏水が発生。その影響で床下に水が溜まり、土台や大引にカビが発生していたほか、床暖房の配線が水に浸かり漏電のリスクが判明、さらには屋根裏の金物の緩みや設置漏れも確認されました。

施工店は「確認はしていた」と主張したため関係が悪化。「事前にホームインスペクションを知っていれば」と後悔した事例でした。

(写真)床下に水が溜まってしまうと湿度が上がり、カビの発生やシロアリ被害の誘発につながってしまう。

(写真)木材の含水率は20%以下が望ましい。この木材は24.2%でカビが発生している。

売主手配の第三者検査で問題が見落とされた

売主側の第三者検査で不具合が見落とされていたケースも少なくありません。

施工業者や仲介業者が手配した第三者検査で「不具合なし」「丁寧に施工されている」と報告を受けた買主は、その結果を信じて安心して購入に踏み切りました。しかし、冬になると1階の水回りで異常な冷え込みを感じたそうです。

買主側でホームインスペクションを依頼した結果、各所の床断熱材が落下しており、断熱材を支えるための固定金物が不足していることが判明しました。最初の検査時には問題がなかった可能性もありますが、売主側の「不具合なし」の報告を信じた結果、住み始めてから再度買主側で調査を行う必要があることは問題ですね。

(写真)床下の断熱材が落下している様子。

(写真)屋根裏の断熱材隙間もよく見られる。

修理費が予想以上に高額だった

インスペクションを利用せずに中古住宅を購入した場合、修理費が予想以上に高額になることがあります。中古住宅は新築に比べてリーズナブルで、同じ予算でも広い物件を購入できるため魅力的ですが、売主が適切なメンテナンスを行っていないと、購入後に高額な修理費が必要になる可能性があります。

例えば築20年程度の住宅でも、雨漏りやシロアリ被害、設備の劣化が進行していることも少なくありません。購入後にこれらの不具合に気づくと、修繕費用が当初の予算を大きく超えることがあるため、注意が必要です。

購入前にインスペクションを利用していれば、不具合が見つかった際に売り主に修理を依頼したり、価格交渉の材料にすることができます。

(写真)雨漏りが発生している屋根裏の様子。

(写真)シロアリ被害でボロボロになった木材。

契約不適合責任が免責で修繕責任を追及できなかった

中古住宅の売買契約には、「契約不適合責任」の免責条項が含まれている場合がありますが、この表記には注意が必要です。特に古い住宅では「現状のままで購入してください」という条件が交わされることが多く、購入後に重大な不具合が見つかっても、免責条項があると売主に責任を問うことができません

そのため、購入後の修繕費用はすべて買主負担になります。契約前に免責事項のリスクについて説明は受けていても、その具体的な内容を十分に理解できていないと、購入後に予想外の出費が発生することがあります。

契約前にホームインスペクションを実施していれば、不安な点をインスペクターに相談できたのにという後悔の声も少なくありません。

既存住宅状況調査では不十分だった

中古住宅を購入する際にホームインスペクションではなく、国土交通省告示に基づく「既存住宅状況調査」を選んだ場合後悔することがあります。この調査では基準に記載された項目は必ず調査されますが、それ以上の詳細な調査については業者の判断に委ねられています。そのため、調査範囲が最低限で終わってしまうこともよくあります。

ホームインスペクションでは、業者によって調査範囲に多少の違いはありますが、現在の基準で必須とされている断熱材の未設置箇所や建具の開閉・施錠確認など、日常生活に直結する部分も調査の対象になります。こうした細かな部分まで確認できるため、生活に支障をきたすような不具合を事前に把握できるのが、既存住宅状況調査との大きな違いです。

ホームインスペクションで後悔しないためのポイント

ここまで、ホームインスペクションを利用した場合と利用しなかった場合の後悔についてご紹介してきました。インスペクションを行ったことで感じる不満や、行わなかったことで起こりうるリスクについて、お伝えできたのではないかと思います。

ここからはホームインスペクションで後悔しないために大切にすべきポイントを

  • 信頼できるホームインスペクターの選び方
  • 依頼前に確認すべき事項
  • コミュニケーションのポイント

の3つの観点から、詳しく解説します。

信頼できるインスペクターの選び方

ホームインスペクションを利用して後悔した人の多くは、インスペクターの選び方に問題があったと感じています。つまり、満足のいくホームインスペクションを実現するには、調査を担当するインスペクターが信頼できるかどうかが最も重要なポイントです。調査費用も安くないため、「この人なら安心して任せられる」と思えるインスペクターを慎重に選びましょう。

以下に信頼できるインスペクターを選ぶためのポイントをまとめました。

保有資格や経歴を確認する

調査を依頼する際はインスペクターの資格や経歴を確認し、信頼のおける人物か判断しましょう。
資格に関しては、国家資格である建築士施工管理士など建物の基礎知識に関連するものから、ホームインスペクションに特化した民間資格のJSHI公認ホームインスペクターなどがあります。
建築士や設計士、現場監督など建築業に携わった経験があるインスペクターであれば、施工の知識が豊富で信頼性が高いです。

「JSHI公認ホームインスペクター」は、資格保有者を検索することが可能です。地域ごとに検索できるので、依頼先に悩んだ際はぜひご活用ください。

サイトや口コミをチェック

公式サイトを見て、以下のポイントをチェックしましょう。
 □ サイトは見やすいか
 □ 調査内容は書かれているか
 □ 料金は明確か
調査の項目や流れがわかりやすくまとめられていれば、信頼性が高いといえます。

Googleなどの口コミや星評価も参考にしましょう。
星5の評価だけでなく星4の評価など幅広く見ると、利用者のリアルな意見を知ることができます。
インスペクターの態度が原因で施工店とトラブルが発生することもあるため、対応の良さや調査の丁寧さが記載されているとより安心できるでしょう。

依頼前に必ず確認するポイント

ホームインスペクションを利用して後悔した人の中には、インスペクションの内容を事前に理解していなかったケースもあります。依頼してから後悔しないためにも、ホームインスペクションを依頼する前に、以下のポイントをしっかり確認しておきましょう。

  • 料金について
  • 調査項目について
  • 得意分野について

事前にこれらを確認し、ご自身の希望に沿った調査であるかを確認することが望ましいです。
以下に具体的な確認事項をまとめました。

料金について

まず料金が明確かどうか、以下を参考に確認しましょう。
 □ 提示された金額に過度な追加請求がないか
 □ 必要な調査がオプションではないか
 □ 別途料金が発生しないか
料金体系が明朗であることは、重要なポイントです。
調査項目について

次に確認すべきは調査項目です。
たとえば、屋根裏や床下の状態を詳しく知りたい場合、点検口から覗くだけの調査では十分な結果を得ることは難しいでしょう。
ご自身が特に気になっている箇所が調査対象になっているかを確認することが大切です。
得意分野について

ホームインスペクションの調査には会社ごとに特色があります。当社であれば、シロアリ調査に強い専門機材や高所カメラを使用していますし、別会社ではドローンを使用した屋根の空撮やタイル壁面の浮きを確認するサーモグラフィを採用している会社もあります。
依頼予定の会社がどの分野に強いのかも合わせて確認することもおすすめです。

意識すべきコミュニケーションのポイント

ホームインスペクションを最大限活かすためには、インスペクターとのコミュニケーションでも意識するポイントがいくつかあります。

認識のズレをなくす

調査を依頼する時は、認識のすれ違いを防ぐために、以下のポイントをしっかり話し合いましょう。
 □ 調査内容が自身の希望と一致しているかどうか
 □ 自身が重視しているポイントが伝わっているか
 □ 調査に関して不安に感じている箇所はないか
話し合った結果に十分納得できる業者に依頼することが重要です。

確認した内容については、お互いが納得する文章をメール等で残しておくと安心できます。

補修の優先順位を確認する

調査結果を確認する際は、補修の優先順位を把握することが重要です。不具合の中には、安全性に関わる重大なものがある一方で、見た目の問題など緊急性が低い場合もあります。
調査の結果を受けて、「どの不具合がすぐに修繕が必要なのか」や「指摘が適切かどうか」を自身でも確認することで、これから長く住み続ける家についてより深く理解できるようになります。

ホームインスペクションを依頼するか迷ったら…

ホームインスペクションを行うメリットとして、「家の状態を専門家が診断してくれる」という点と、「メンテナンスに関してアドバイスをしてくれる」という点があります。

売主や不動産業者が「問題ない」と言っていても、建物の状態は調査しなければわからないことは多くあります。そのため、物件購入前に現状をしっかり調査することで、「購入しても問題ないのか」「自分たちの希望に沿った物件なのか」を客観的に判断することが重要です。

また将来的に問題となりそうな箇所や劣化箇所について確認することで、購入後必要なメンテナンスやリフォームについて具体的に考えやすくなります。

Point

依頼を迷っている際は、以下の観点から検討してみてください。

  • 安心して暮らせる住まいを手に入れるために調査費用を投資する価値があるか
  • 購入後の予期せぬトラブルや不安を未然に防ぎたいか

ホームインスペクションの結果が住み始めた時の安心感につながり、将来の不安解消に役立つと感じられたならぜひ依頼をご検討ください。

まとめ

今回はホームインスペクションによる後悔についてご紹介しました。

ホームインスペクションを利用して後悔する人がいる一方で、ホームインスペクションを知らなかったため、利用せず後悔する人も少なくありません。

ホームインスペクションを行うことで得られるメリットは多岐にわたります。例えば、購入予定の住宅に不具合が見つかった場合、第三者からの指摘があることで売主との交渉がしやすくなるだけでなく、施工業者への対応方法について具体的なアドバイスが得られます。さらに、不具合の確認にとどまらず、将来的なリフォームの計画に関する助言も受けられるため、新築・中古を問わず、ホームインスペクションの活用は大いに価値があるといえるでしょう。

それでも後悔する原因としては、主に業者選びでの失敗や事前の準備不足が考えられます。依頼を検討されている方はこのコラムを参考に、ホームインスペクションを最大限活用していただければ幸いです。

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