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ホームインスペクションにデメリットは存在する?

2022.11.28
鳥居

WRITER

鳥居 龍人

二級建築士 e-LOUPEインスペクター

建築事務所を経て株式会社テオリアハウスクリニックに入社。前職での現場監督経験から、施工から設計まで幅広い知識と経験を持つ。現在はその経験をもとに戸建て住宅のインスペクション業務に携わる。JSHI公認ホームインスペクター。既存住宅状況調査技術者。

「ホームインスペクションにデメリットはありますか?ホームインスペクションを実施する上でのマイナス面について詳しく知りたいです。」

ホームインスペクション(住宅調査)を行うにあたって、メリットは多くの記事で記載されていると思いますが、対してデメリットに関してはあまり触れられない事が多いです。

そこで今回は「実際のところホームインスペクションのデメリットって何なの?」というテーマについて、プロのホームインスペクターである私の視点からお話ししていきます。

ホームインスペクションを実施するデメリット

調査には費用がかかる

ホームインスペクションを実施するには相応の費用がかかります。

一般的な完了検査だけではなく、しっかり同行もしてもらって建物全体を調べるにはおおよそ10万円前後の費用が必要となります。

特に施工開始時の基礎工事から引き渡し前の完了検査までを一括で調査を行うホームインスペクションの場合費用はさらにかかり、おおよそ40万前後の金額が必要となります。

まとまった金額がかかることを考えると「これだけのお金があれば別のことに使えるのでは?」と思ってしまうかもしれません。

欲しい情報が得られない場合もある

調査範囲

たとえホームインスペクションを実施したとしても、場合によってはあまり精度の高くない調査結果となってしまう可能性もあります。

ホームインスペクションは調査会社により価格や調査範囲がまちまちです。

また、同じ調査会社のホームインスペクションであったとしても「どのようなオプションをつけるか」で調査範囲は変わってきます。

簡易的な調査のみのホームインスペクションであるほど正確な情報は得にくくなりますし、未確認部分で不具合が生じている可能性も大きくなりますので注意が必要です。

例えば小屋裏や床下の調査であればオプション調査を実施しない基本メニューだけですと、点検口から離れた奥まった箇所の確認は行いません。

それ以外にも基礎内部の鉄筋探査や屋根の状況調査、設備周りの通水確認など、重要な調査項目はオプションとして分類されていることが多いです。

こういった事情から、調査によっては「ホームインスペクションの意味があったのかな・・・」と感じてしまうことになるかも知れません。

ホームインスペクターの技量

ホームインスペクションは価格や調査範囲だけでなく、調査を実施するホームインスペクターの技量によっても得られる結果や満足度は異なってきます。

例えば、1級建築士を謳っていても経験したことのある建築物が大型の商業施設ばかりだったり、そもそも住宅に携わってこなかった建築士が戸建住宅の調査を行うとかなりの確率で不具合の見落としが発生します。

戸建てには戸建ての、大型の施設には大型の施設の気をつけなければならない箇所があります。

戸建住宅の調査に疎い建築士にホームインスペクションを任せてしまうと、「問題ないと言っていたのに!」となってしまい、せっかく調査を行った意味を感じられないかも知れません。

第三者性

ホームインスペクションで最も重要なのは売主と買主、両者にとって公平な立場で調査を行うという「第三者性」です。

これが破綻しどちらかに傾いた調査を行うとその住宅の調査結果は一気に疑わしいものとなります。

例えば売主が依頼主であるホームインスペクションの場合、調査自体がどうしても売る側の意見が強くなり、この程度の不具合であれば大丈夫だろうと流されてしまい、不透明な調査結果を渡されることもあります。

そうなると、いくらホームインスペクションを実施したといっても手元に残るのは「信憑性に欠けた情報」ということになってしまいます。

調査結果は客観的な情報でしかない

ホームインスペクションを実施すれば建物の現状について正確に把握することはできます。結果不具合が見つかる場合もあるでしょう。

しかしその情報が必ずしも「将来への投資」に繋がるとは限りません。

特に中古住宅の場合は「あちこちに指摘事項があり修繕には膨大な費用がかかってしまう」といった結果となることも想定され、最悪の場合は「やっぱりこの物件は諦めて他の家を探そう」となることも想定されます。

「大きな買い物で失敗をしなくて済んだ」と考えられればいいのですがホームインスペクション自体が相応の費用がかかることから、捉えようによっては「住まない家に対してお金をかけてしまった」ことになります。

また新築住宅でもホームインスペクションを実施した結果大きな不具合が確認され施工店とトラブルになるケースもありますし、指摘事項として報告した内容を全て修繕してもらえるとは限りません。

その場合、ホームインスペクションによって「知ってしまった情報」にモヤモヤしながら生活する・・・ということもあるかも知れません。

ホームインスペクションのデメリットを軽減するには?


ここからはホームインスペクションのデメリットをなるべく減らし、プラスの面だけをうまく活かすためのコツをご紹介していきます。

調査が必要な物件かどうか見極める

調査を行うべき物件を絞れば経費を抑えることができます。

「ホームインスペクションを行うことが大切だと聞いたから」と検討をしている候補の物件1件1件で調査を依頼していると非常にコストがかさんでしまうことになります。

検討している物件が複数ある場合はホームインスペクションの実施そのものを見送るのも選択肢の1つです。

ホームインスペクションをを実施する前に「本当に住みたい(購入したい)物件か?」と一度気持ちを整理してみましょう。

調査範囲と精度の関係を知っておく

ホームインスペクションの「調査範囲と精度の関係」を事前にしっかりと把握しておきましょう。

例えば床下の調査であれば、床下に進入しての調査と点検口からのぞいての調査とでは確認ができる範囲が大きく異なり、その分調査自体の精度も大きく変わってきます。

「おおよその雰囲気がわかれば良い」というのであればより費用がかからない簡易的なホームインスペクションでも十分ですが、「不安を残さないように隅々までみてもらいたい」というの場合は、それに見合った調査かどうか、事前に確認するようにしましょう。

ポイントとして、もし「しっかり見て欲しいけどどんなオプションを選べばいいのか分からない・・・」と思ったのであれば確実に実施していただきたいのは「床下・小屋裏の進入調査」です。

構造や雨漏れなどの重大な問題に関わる部分での見落としは絶対に避けたいところです。

せめて小屋裏・床下への進入調査だけでも実施しておくのがおすすめです。

また、もしオプションの選択で迷ってしまうようであれば業者が提案するパックプランを活用してみるのもいいでしょう。

信頼できる業者であるか確かめる

施工店・リフォーム業者との繋がり

調査会社が自分の建築した(購入した)建物のハウスメーカーやリフォーム業者と繋がりがないか必ず調べておいたほうがいいでしょう。

もし調査会社が複数の事業を行っていて別部門でその建物のハウスメーカーやリフォーム業者と関わりがあった場合、不用意なことは言えない立場から買主に不利な情報をあえて言わない可能性も生まれてきます。

見極めのコツとして、調査会社にホームインスペクションを依頼する際は、あえてどこのハウスメーカーで施工したかを伏せた状態で「対応していないハウスメーカーはありますか?」と聞いてみましょう。

第三者性も大事にしている会社であればすぐに答えてくれるはずです。

この手法は新築だけでなく、中古住宅や自宅の調査でも有効です。

インターネットの口コミ評価の確認

今はSNSや検索サイトなどで会社の評判を知ることができます。

星評価や口コミ投稿は調査会社の雰囲気や、どういったところを大事にして調査しているかがわかりやすい指標として確認出来ます。

注意点として、口コミを見る際グーグルの星評価で言えば星5はいい事しか書いていないことが多いです。

確認すべきは星1や星2などで、わざわざ口コミを書いてまでなぜ低い評価にしているのかを確認しましょう。

お客様からの忖度のない意見は会社を選ぶいい参考になると思います。

まとめ


今回はホームインスペクションのデメリットとその対策方法についてご紹介してきました。

ホームインスペクションは建物の状態を正確に把握する上でとても大切なことですが、状況によってはマイナスの面が大きくなってしまう可能性もあります。

やはり大切なのは「コストと見返りを正確に知ること」です。後悔のないホームインスペクションを行うようにしましょう!

また業者を選ぶ際の口コミ評価の確認は今の時代覆すことのできない会社の評価となります。非常に参考になりますので調査を行う前に依頼を考えている会社を2つ3つほど選び、口コミや金額なども合わせて比較してみることをおすすめします。

こちらのページではホームインスペクションについてより詳しい解説を行なっていますので気になった方はぜひチェックしてみてください。

 

「見えないところへの徹底した追求」がe-LOUPEの基本方針です。