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「ホームインスペクションは意味ないから無駄」は本当か。プロが真相を解説

2025.04.14
岩井

WRITER

岩井 数行

二級建築士 e-LOUPEインスペクター

建築事務所を経て2010年に株式会社テオリアハウスクリニック入社。床下調査や断熱事業での現場経験を活かし、現在は戸建て住宅インスペクション事業に携わる。JSHI公認ホームインスペクター。既存住宅状況調査技術者。蟻害・腐朽検査士。

住宅購入を検討されている方から、「ホームインスペクション(住宅診断)は本当に必要なの?」というご相談をよくいただきます。

中には、「自分は実施したいが家族や売主、不動産仲介業者が否定的で迷っている」というケースも少なくありません。また、インターネット上では「無駄だった」という意見も見受けられ、不安に感じる方も多いようです。

このコラムでは、ホームインスペクションは無駄だと言われる理由を整理しながら、ホームインスペクションが本当に必要なのかについてわかりやすく解説します。

そもそもホームインスペクションとは?

ホームインスペクションとは、住宅に関する専門的な知識と資格を持つ第三者が建物の状態を調査し、不具合や劣化の有無を確認したり、今後の維持管理や修繕に関するアドバイスを行う業務です。

わかりやすく例えると「健康診断」のようなもので、住宅の“健康状態”を把握することができます。


2018年の宅地建物取引業法(宅建業法)改正により、インスペクションに関する説明義務が新たに設けられたことで、以前よりもその存在は広く知られるようになってきました。国としても今後の住宅市場においてインスペクションの活用を一層推進していく方針を示しているため、住宅購入時や売却時の重要性が高まることが予想されます。

しかしながら、住宅購入を検討されている方々や、業界関係者の中にもその内容を十分に理解していない事が多いのが現状です。

「必要ない」「無駄」と言われる理由

今後、住宅購入時にますます重要になると考えられているホームインスペクションですが、まだその内容や役割が十分に知られていないため、「必要ないのでは?」「やっても意味がないのでは?」と感じる方もいらっしゃいます。

ここでは、住宅購入の際に身近な存在である不動産業者ご家族・ご友人などの立場から、なぜそのような声があがるのかを、専門家の視点でわかりやすくご紹介していきます。

不動産業者が「必要ない」と説明する背景

不動産業者がホームインスペクションを不要とする理由には、新築と中古それぞれに異なる事情があります。それぞれ見ていきましょう。

新築住宅の場合

新築住宅においてホームインスペクションが「不要」とされる主な理由は以下のとおりです。

  • 検査が実施されているため、追加の調査は不要とされる
  • 新築ゆえに不具合リスクが低いと考えられている

現在の新築住宅は建築基準法に基づいて施工されており、建築確認や中間・完了検査、保険加入のための調査など、複数の検査が実施されます。また施工会社独自の自社検査を行っているところもあり、それらを理由に「新築なら大丈夫」「これ以上の検査は必要ないですよ」と説明されるケースもあります。

ただし、これらの検査は法令基準に適合しているかを確認するもので、建物全体の不具合や使用上の問題まで把握できるわけではありません。また、自社検査の基準は示されず、精度には担当者による差があるのも現実です。
特に床下や小屋裏など重要な箇所が調査されず、小さな不備が後の暮らしに影響することもあります。


近年、施工店のコンプライアンス意識が高まり、明らかな建築基準法違反や施工不備が生じる可能性は少なくなっています。もちろん調査に伺って不具合がない住宅もありますが、新築住宅であっても不具合は大小さまざま存在していることのほうが多いのも事実です。

不動産業者と利害関係のない第三者の調査によって建物の状態を正確に把握しておくことは、将来的なメンテナンスや適切な住まいの管理にもつながり、大きな安心を得られるでしょう。

 

中古住宅の場合

中古住宅でも、ホームインスペクションが「必要ない」と言われるケースが少なくありません。その背景には、次のような理由が挙げられます。

  • 重要事項説明書で不備の告知がされているため
  • すでに売主側でインスペクションを実施しているため
  • 不具合が見つかることで契約がキャンセルになるのを避けたいから
  • インスペクションをしている間に他の購入希望者に決まってしまう可能性があるため

ホームインスペクションを実施しようと売り主に相談した際、「既に必要な調査は終わっている」として断られることが少なくありません。

しかし、この調査結果を全面的に信用してしまうのは少々危ないかもしれません。

売主側が行う既存住宅状況調査は、あくまで最低限の確認にとどまる場合が多く、床下や屋根裏といった重要な箇所が調査されていないこともあります。そうした場所に、シロアリの被害や雨漏りといった深刻な問題が隠れている可能性も実際にあります。

また、インスペクションによって不具合が発覚し、契約が取りやめになることを恐れて、積極的に調査を勧めないケースもあります。こうした事情は理解できますが、購入後に思わぬ不具合が発覚した場合、修繕にかかる手間や費用は大きな負担となりかねません。

買主として事前に住宅の状態を把握しておくことが、トラブルを避けるうえでも大切ですね。

 

新築・中古どちらにも当てはまる理由

新築・中古どちらにも当てはまる主な理由としては、以下が挙げられます。

  • 不具合の指摘によって自社の信頼性が損なわれることを懸念している
  • インスペクションの対応を「手間が増える」と感じている
  • 仮に不具合が見つかっても、対応する意思がない、または後回しにする傾向がある

新築・中古を問わず、「信頼を疑われているようで不快だ」「手間が増えるから面倒だ」といった理由から、消極的な対応をされることもあります。

ただ、誤解していただきたくないのは、インスペクションの目的は売主や施工業者の信用を疑うことではないという点です。インスペクションはあくまで第三者の立場から建物の状態を客観的に確認し、買主がより安心して判断できるようにするためのものです。
建物に自信がある売主や誠実な対応を大切にしている業者であれば、インスペクションの実施にも理解を示し、協力的な姿勢を取ってくれることが多いでしょう。

そのため、もしインスペクションに対して極端に非協力的な対応をされた場合は、今後のやり取りにおいても不安が残る可能性があります。万が一、購入後に不具合などが発生した際の対応にも影響することが考えられるため、必要に応じて担当者の変更や物件選びの見直しを検討してみるのも一つの方法です。

家族・知人から「無駄」と言われる理由

ホームインスペクションに対しては、専門家以外の立場、たとえば家族や身近な人から「必要ないのでは」と言われることもあります。その主な意見は次の2つです。

  • 費用対効果がわかりにくい
  • 信頼している業者を疑うようで気が引ける

たしかに、ホームインスペクションには一定の費用がかかります。たとえば新築住宅の場合、約10万円前後になることが多いです。ただし、何千万円もの大きな買い物である住宅購入において、第三者による専門的な調査を受ける費用としては、妥当な範囲といえるのではないでしょうか。

内覧会と同じ日に実施することもできるため、スケジュールの調整がしやすく、国家資格を持つ建築士や専門の検査員が行う丁寧な調査によって、将来の安心につながると考えれば、大きな安心材料にもなります。

「施工会社や仲介の担当者が親切にしてくれているのに、インスペクションをお願いするのは失礼ではないか」と感じてしまう方もいらっしゃるかもしれません。ですが、インスペクションは誰かを疑うためのものではなく、住まいの状態をしっかり確認するための手段です。

売主や仲介会社、ホームインスペクターなど、すべての関係者が「安心して住める家を届けたい」という気持ちを持っているからこそ、インスペクションという客観的な確認が、よりよい信頼関係を築く手助けにもなります。

ホームインスペクションのメリット

ホームインスペクションには、購入前の不安を解消し、安心して住まい選びを進めるためのさまざまなメリットがあります。その主な利点は以下になります。

  • 普段見えない場所を「見える化」できる
  • 情報の非対称性を解消し、関係者間の認識をそろえる
  • 不具合が見つかっても、早期であれば対応が容易
  • 中立な第三者による調査で、不安を払拭できる

ここからはメリットについて、一つ一つ解説していきます。

普段見えない場所を「見える化」できる

住宅の構造の中でも床下や屋根裏といった箇所は、購入前の内覧ではなかなか確認できない部分です。ホームインスペクションでは、これら目の届かない場所も専門家が丁寧に調査し、不具合や異常がないかをチェックします。
たとえば、木部の腐食シロアリ被害断熱材の劣化雨漏り跡など、小さなサインを見逃さずに発見できることがあります。

(写真)床下部分のシロアリ被害。

(写真)屋根裏空間の雨漏り跡。

情報の非対称性を解消し、関係者間の認識をそろえる

ホームインスペクションの結果は、買主・売主・仲介業者など関係者全員で共有できるため、関係者間の認識を揃えることができます。
たとえ調査の結果として「特に大きな不具合がなかった」としても、その確認がとれたこと自体が安心材料になるでしょう。逆に問題が見つかった場合も、事前に全員が事実を共有することで、その後の対応もスムーズになります。

不具合が見つかっても、早期であれば対応が容易

不具合があった場合でも、引き渡し前に発見できれば、修繕や補修の交渉がしやすくなるのも大きなメリットです。新築であれば施工会社に、既存住宅であれば売主に対応を求めやすく、トラブルを未然に防ぐことができます。

特に中古住宅の場合は、「修繕費をどちらが負担するのか」といった交渉の材料にすることができます。事実に基づいた協議が可能となることで、取引の透明性を高めることもできるでしょう。

中立な第三者による調査で、不安を払拭できる

インスペクションは、売主側でも仲介側でもない、あくまで中立な第三者が実施する調査です。だからこそ、偏りのない視点で建物の現状を客観的に把握することができます。
「どんな不具合があるかわからない」という漠然とした不安を取り除き、「自分がこれから住む家の状態を正しく知る」ことができるのは、買主にとって大きなメリットです。

ホームインスペクションは、ただの「調査」ではなく、安心・納得・円滑な取引を実現するための重要な一歩といえるでしょう。

ホームインスペクションを成功させるためのポイント

ホームインスペクションを有意義なものにするためには、調査を依頼する相手、つまり「誰にお願いするか」が非常に重要です。以下のポイントを押さえて、信頼できるホームインスペクターを選びましょう。

信頼できる業者を選ぶ

ホームインスペクションの実施に、必ずしも資格が必要なわけではありません。しかし、調査を行う検査員がどのような知識や経験を持っているかを判断する目安として、所有している資格は大きな参考になります。

建物に関する国家資格である建築士の資格を持つ専門家や、民間資格ながらホームインスペクションに特化した住宅診断士(ホームインスペクター)の資格を持つ人が適任です。これらの資格保持者であれば、構造や劣化、施工状態などを適切に評価する知識を持っていると考えられます。

また、中古住宅の売買においては、「既存住宅状況調査」が重要事項説明書に添付されるケースがあります。この調査は、建築士であり、かつ所定の講習を修了した既存住宅状況調査技術者のみが実施可能です。

ただし、既存住宅状況調査では調査内容が限定的です。
床下や小屋裏に実際に入って調査を行わなくてもよい仕様となっているため、建物全体の状態を把握するには情報が不十分な場合もあります。

調査の内容や方法について事前に確認する

ホームインスペクションを行う際は、調査内容について事前に確認しておくことをおすすめします。特に床下や屋根裏など、点検口から覗くだけでは見落とされやすい箇所について、どのように調査を行うのか(目視なのか、侵入調査をするのか)をあらかじめ確認しておくことは大切です。

インスペクション業者の選び方については下記のコラムにて詳しく解説しています。

【結論】ホームインスペクションは無駄ではない

実務経験者としての見解

これまで数多くの新築・中古住宅のホームインスペクションに携わってきた経験から、はっきりと言えるのは、ホームインスペクションは決して「無駄なもの」ではないということです。

たしかに、新築物件においては、重大な欠陥や「このまま住むのは危険」と判断されるような不具合が見つかることは非常に稀です。ですが実際には、外構や内装を含めて、軽微な不具合や施工のばらつきは新築であっても多くの現場で見受けられます。

重要なのは、「不具合の有無」だけでなく、それがどこに、どの程度あり、暮らしにどう影響するかを正しく把握することです。そうすることで、漠然とした不安が「具体的な対処すべき事柄」として明確になり、結果的に大きな安心感へとつながります。

中古住宅ではさらに専門的な判断が必要

中古物件の場合は、新築以上に状況が多様です。たとえ築年数が同じであっても、過去にどのようなメンテナンスがされてきたかどのような環境(立地や気候条件)で使われてきたかによって、建物の状態には大きな差が生じます。

見た目がきれいでも、内部に劣化が進んでいるケースもあり、築年数や外観だけでは正しい判断が難しいのが実情です。こうした点を見極めるには、やはり専門知識と経験を持った第三者による調査が必要になってきます。

ホームインスペクションは、住まいの購入を後悔しないための大切な工程です。「不具合を見つける」ことだけが目的ではなく、納得と安心を得るための手段として、ぜひ前向きに取り入れていただきたいです。

まとめ

ホームインスペクションは建物の不具合を責めるためのものではなく、現状を正しく把握し、不安を軽減するためのひとつの手段です。人が健康診断を受けて自分の体調を知るように、住宅においても新築時や売買のタイミングで状態を確認することには一定の意味があると考えられます。

新築住宅の場合は、完成直後が建物の状態を確認しやすい貴重な機会です。このタイミングを逃すと、後から把握しにくくなる部分も出てきます。
中古住宅については、見た目や築年数だけでは判断が難しいことも多く、購入前に専門的な視点でチェックを行うことで、万が一の備えや購入後の対応がしやすくなるでしょう。

ホームインスペクションは義務ではありませんが、住宅に対する理解を深め、より安心して住まい選びを進めるための選択肢のひとつとして、住まい選びに取り入れていただければ幸いです。

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