e-LOUPEの旬ネタコラム
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ホームインスペクションに必要な資格とは?依頼先を決める基準をご紹介
WRITER
岩井 数行
二級建築士 e-LOUPEインスペクター
「ホームインスペクションをお願いしようと思うのですが、何か特別な資格はありますか?どんな人にお願いすればいいですか?」
今回はこのような疑問にお答えします。
建物を見てもらうのであればちゃんとした資格を持っている人の方がいい、そう思う人が大半ではないかと思います。
実際、私もお客様から「建築士の資格は持っているの?」と聞かれることがよくあります。
しかし実は、ホームインスペクターに関する資格は建築士だけではありません。今回は「ホームインスペクター」としての実力の裏付けとなる資格についてご紹介していきます。
目次
ホームインスペクションに関わる主な資格
ホームインスペクションに関係のある資格としてまず挙げられるのは
- 建築士
- 既存住宅状況調査技術者
- 適合証明技術者
の3つです。
また、取得が必須という訳ではありませんが、ホームインスペクションをお願いする際の安心要素となる資格として「ホームインスペクター」があります。
これら4つの資格について詳しくご紹介していきます。
建築士
ホームインスペクションを行う人間にとって建築士は必須の資格です。
建物に関する広く体系的な専門性の高い知識の保有、その証明こそが建築士という肩書きだと言えるでしょう。
ご存知の通り、建築士は国家資格です。そのことから、取得には相応の時間がかかりますし責任も重大になります。
建築士の資格を取得するには、建築に関わる様々なカリキュラムが学べる学校、大学や専門学校に通ったり、長期間の実務経験を積むなどして受験資格を得た後に試験に合格する必要があります。
ちなみに建築士には主に「一級建築士」と「二級建築士」があります。(厳密には木造建築士も該当しますが所有者は少数なので割愛します)
一級建築士と二級建築士の違いは「取り扱える建物の規模や用途」です。
二級建築士が取り扱える建物は木造住宅、鉄骨などの家屋で、階数・高さ・面積などにも一定の制限があります。一方、一級建築士はその制限が無く大規模な建物を取り扱うこともできます。
とはいえ、一般的な住宅であれば設計や施工に関して一級と二級で資格上の差はありません。これはそのまま検査業務に関しても同じ事が言えます。
また、建築士を取得する過程で「ホームインスペクション」について具体的に細かく学ぶ機会はほとんどありません。
このことから、建築士の資格はあくまでも必要条件であり、それだけで調査品質を保証するのは難しいと覚えておきましょう。
既存住宅状況調査技術者
中古物件の売買においてホームインスペクションは法律上、「重要事項の一部」という扱いになります。
既存住宅状況調査技術者は重要事項の一部としてのホームインスペクションを行うためには必ず持っていなくてはならない資格です。
ちなみに重要事項の一部とは具体的には「建物状況調査」という項目のことをいいます。
この項目には、
- そもそもホームインスペクションを実施したかどうか
- 実施していた場合、どのような結果だったのか
の情報が載せられます。
既存住宅状況調査技術者は決められた講習会を受講することで取得できますが、講習会を受講できるのは建築士のみに限定されています。
つまり、中古物件の売買に携わるには建築士の資格も必須条件ということになります。
適合証明技術者
中古住宅を購入する際に活用できる住宅ローンに「フラット35」というものがあります。
フラット35を利用できる住宅には条件があり、それに適合しているかを事前に証明する必要があります。
適合証明技術者はその調査を実施するために必要な資格となります。
適合証明技術者も講習会の受講によって取得が可能ですが、やはり既存住宅状況調査技術者と同様に受講できるのは建築士のみとなっています。
もしフラット35の利用を考えている物件でホームインスペクションを行う場合は、インスペクターが適合証明技術者の資格を保有しているか、事前に確認しましょう。
ホームインスペクター(住宅診断士)
ホームインスペクターは、ホームインスペクションについてのより実務的な知識や調査の判断力を持っているかを保証する資格です。
JSHI(日本ホームインスペクターズ協会)により認定される資格で国家資格ではなく、取得も必須ではありません。
とは言え、ホームインスペクションに携わる人間であればこの資格を取得していることが望ましいです。というのも、ここまでご紹介してきた資格はホームインスペクションの実務に特化したものとは言えません。
例えば建築士は本格的な実務に踏みこんだ内容ではありませんし、既存住宅状況調査技術者はホームインスペクションの講習ではありますがその内容は必要最低限にとどまっています。
一方、ホームインスペクター(住宅診断士)はより実務的な知識の証明になります。取得には試験を受ける必要があり、長い期間しっかりと勉強をしないと合格は難しいです。
ホームインスペクターの資格を持っているかどうかは実践的な知識を保有しているかを判断する上で非常に役立つと言えるでしょう。
その他のホームインスペクション関連資格
ここまでご紹介してきた4つの主要な資格以外にも、公的資格や民間資格の中にはホームインスペクションと関連が深いものがありますので代表的なものをいくつかご紹介します。
いずれもその分野に特化した資格となっており、検査員がどの分野に詳しいのかを確認する目安となるでしょう。
耐震関係
- 耐震診断資格者(日本建築防災協会)
- 耐震技術認定者(日本木造住宅耐震補強事業者協同組合)
家の耐震診断も計画される際はこの様な資格を有している人に相談されるのが良いでしょう。
雨漏り関係
- 雨漏り診断士(雨漏り診断士協会)
- 雨漏り鑑定士(雨漏り鑑定士協会)
共に民間資格となります。雨漏りの場合散水試験等を行う必要がある場合もありますので、ホームインスペクションではこれらの資格の方でもはっきりと判断できない場合もあります。
シロアリ関係
- 蟻害・腐朽検査士(しろあり対策協会)
白蟻や木部の腐れを検査する知識経験を有している者になります。
ホームインスペクターは資格で選ぶべき?
資格の有無は一定の専門的な知識を保有しているかの判断に役立ちます。しかし資格を保有していれば無条件に信頼しても大丈夫なのかというと、残念ながらそうとは言い切れません。
資格を「悪用」する人間も
1つ目の理由は、自分の立場を悪用して不正なホームインスペクションを実施するケースがあるからです。
これは実際にホームインスペクションが古くからおこなわれているアメリカでは、売主とホームインスペクターとでの融着が問題にもなりました。
日本においてもそこまでの大きなトラブルは聞きませんが、売主側が用意したホームインスペクションが不十分だったという。不満の話が伝わってきます。
たとえ建築士を保有していたとしても、やり取りや契約内容によっては満足のいく調査が実施されない可能性も十分考えられます。
「建築士だから」
「ちゃんとした資格を持っているから」
「しかも値段も格安でお得そうだ」
こういった理由だけを見て選んでしまうのはリスクがあるということを覚えておきましょう。
「実務の実績」が重要
2つ目の理由は、たとえ資格を保有していても実際に調査を行ってきたという実績がなければホームインスペクションの品質は落ちてしまうからです。
資格を取得するための勉強と、実際にホームインスペクションをする中で手に入れた知識や経験とは異なります。体の動かし方や指摘事項が多い場所などは、体で覚えていく要素が強いのです。
これらのことを踏まえると、ホームインスペクターにとって資格を持っているかどうかはあくまでも必要最低限の条件であることが言えます。
ホームインスペクションで資格より大事なもの
実践的な知識の有無
いくら資格を保有していても実践的な知識を持っていないと、品質の高い調査を行うことはできません。
その調査会社がどれくらいの経験を積んでいるかは、目に見える資格と異なって見分けるのが難しいです。
とはいえ、ヒントとなる手がかりは存在します。それは、その調査会社がどのような情報発信をしているかです。
基本的な情報だけでなく、実際に現場で身につけた知識を語ってくれているかどうかを知ることができます。HPやYouTubeなどがあるかどうか、もしあるのであればどのような発信をしているのか、チェックしてみましょう。
その際にどの様な機材を使用しているかも確認してみましょう。ホームインスペクションの場合様々な機材を使用します。検査できる場所できない場所も変わってきます。
例えば一言に「脚立」といっても小さいサイズでは、小屋裏に上がる事が難しいです。道具一つでもどの様な調査を行っているか推測する事ができます。
また、それぞれの会社に問い合わせをしてみて、ご自身の不安に対して親身になって相談に乗ってくれるのか、そういった見方で比較してみるのもいいと思います。
信頼の透明性
権威のある肩書きを利用して買主を無条件に信頼させようとするケースには注意が必要です。「本当に信頼できる調査会社かどうか」という視点を持つことが大切です。
大前提として「ホームインスペクターの第三者性の確保」という事があります。
売主の立場に近いと、検査結果に手心を加えてしまうという事が起こりかねません。依頼しようと思っている物件の売主と検査会社に確認してみるのも良いでしょう。
インスペクションの精度において信頼できる会社かどうかを見極めるポイントとしてまず挙げられるのは、実際に調査に来てくれるホームインスペクターの顔や名前をはっきりと知ることができるかどうかです。
場合によっては外部へ委託しており、実務経験が無い・・・なんてことがあるかもしれません。どのような人が対応してくれるのか情報が開示されているかも判断のポイントになります。
それに加え、これまで何軒くらいのホームインスペクションを行ってきたのか、お客さんの口コミ・レビューがどれくらいあるのか、なども判断のポイントになります。
また、そもそもなぜ不正が起きるかというと、「仕事をくれている人間への忖度」をしているからです。仮に売主や仲介業者から紹介を受けたといても即決せずに、一つの候補としておき買主自身の手で調査会社を探し、依頼をすることも非常に効果的な対策となります。
まとめ
今回はホームインスペクションの資格についてご紹介してきました。
資格を保有しているかどうかはもちろん大切なポイントです。しかしそれ以上に重要なのは経験・信頼の裏付けがあるかどうかです。
「資格を持っているから安心」ではなく、その上でどのような調査をしてくれるのかという発想を持っておくようにしましょう。
ホームインスペクションについてはこちらのページでも詳しく解説していますのでもし興味を持っていただけたようでしたら併せてご一読いただけると嬉しいです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
「見えないところへの徹底した追求」がe-LOUPEの基本方針です。