e-LOUPEの旬ネタコラム
- 中古戸建て
建物状況調査の「結果の概要」って何?どんな事が分かるの?
WRITER
鳥居 龍人
二級建築士 e-LOUPEインスペクター
今回は建物状況調査の結果の概要についてお話ししていきます。
中古住宅を購入の際、仲介業者は建物状況調査のあっせんが出来るかどうかを案内することが法律により決められています。
とはいえ、そもそも建物状況調査とは何なのか、どういったことが分かるのかについてはあまりイメージできていない人が多いのではないかと思います。
そこで今回は、建物状況調査の報告である「結果の概要」にフォーカスを当ててご紹介していきます。
建物状況調査の「結果の概要」とは
建物状況調査の調査内容は調査会社によって大きな差異が生まれることはありません。なぜかというと、正式なフォーマットが国土交通省によって決められているからです。(こちらのページで確認をすることができます)
さて、建物を購入する際の契約は、
- 媒介契約
- 重要事項の説明
- 売買契約
の順番で行われます。
ここで、「重要事項の説明」は、建物の売買契約を行う前に「本当にその建物を買うの?」という最終的な意思決定を表す場になります。
重要事項の説明には、契約に関する大事な情報が共有されますが、建物状況調査の結果報告もこの場で行われます。
仲介業者は重要事項の説明をお客さんに行う前にあらかじめ建物の検査を行った調査会社から先ほどご紹介した書類を受け取ります。そして仲介業者はこの結果の概要に関する書類を元に建物の状況を売主に説明する流れとなります。
建物状況調査の結果の概要で何がわかる?
ここまで建物状況調査の結果の概要についてご紹介してきましたが、ここからは具体的にこの書類から何を読み取れるのかをご紹介していきます。
- 全体の総括
- 総合的に建物の強度に影響を及ぼすような問題があったかどうかの判定を行います。
建物は大きく、
①構造耐力上主要な部分に係る部位に問題がなかったかどうか
②雨水の浸入を防止する部分に係る部位に問題がなかったかどうかという2つの視点で調査がされます。
- 構造耐力上主要な部分に係る部位
- 構造耐力上主要な部分に係る部位とは具体的には、基礎、土台・床組、床、柱、梁などです。
- 雨水の浸入を防止する部分に係る部位
- 雨水の浸入を防止する部分に係る部位とは具体的には、外壁、軒裏、バルコニー、内壁、天井、小屋組などです。
また、各調査項目はそれぞれ①有②無③調査できなかった、のチェック形式で評価されます。
建物状況調査の結果の概要の注意点
ここで問題になってくるのが建物状況調査の「精度」です。精度においてもっとも重要なのは「どのようにどこまで見ることができたのか」という考え方です。
- 建物を確認できる範囲は限られている
- まず前提条件として覚えておかなければいけないのは、建物の調査は「目視」で「見える範囲だけ」行うということです。
- 床下や小屋裏は「点検口からのぞくだけ」
-
その具体的な例が「床下」や「小屋裏」の調査です。結果の概要には床下や小屋裏といった調査項目が記載されており、「異常なし」となっていれば「ああ、床下は問題ないんだな」と思うかも知れません。しかしその背後には「どのような調査を行った結果問題なしと判断したのか」を考える必要があります。
床下や小屋裏の調査は基本的には点検口からのぞく事で行います。当然見える範囲は限られますし、奥の方でリスクが潜んでいる可能性も考えられます。実際私が調査を行った物件でも、点検口から見えない場所で指摘事項を発見したケースがいくつもあります。
しかしそれでも表面上は「劣化事象無し」と判断されてしまうということです。
- 指摘事項についての細かい説明はなし
- また、劣化事象については、「あったかなかったか」の2段階のみの評価です。実際は絶対に処置が必要なものから、現状は問題がないがどこかのタイミングで修繕を行うことが望ましいものまで多くのパターンが考えられます。このように、結果の裏側に存在する隠れた事情をこの報告書だけでは読み取ることができないということを頭に入れておきましょう。
- どのレベルの調査を求めるか
-
ここで言いたいのは「建物状況調査の報告フォーマットは当てにならない」ということではなく、「想定している調査レベルと実際の調査内容とが一致していなければいけない」ということです。
事前にどのようなリスクがあるのかを知っておかなければ、もし後で何か問題が発覚した時に「調査結果には問題なしと書いてあったのにおかしい!」ということになってしまいかねません。
調査会社は独自の調査項目を設けていますので、より高額で高度な調査を行うことで調査の精度を上げることができるので、より見えない不具合の見落としを少なくすることができます。事前にしっかりと調査内容を決めておきましょう。
まとめ
今回は建物状況調査の「結果の概要」についてご紹介してきました。
一応建物状況調査を活用すれば建物の大まかな状態を把握することができます。しかし結果の概要の調査項目では見えないリスクが残っており、より高精度な調査が必要ならばより精度の高い調査が必要になります。
建物状況調査を行う際はどのような調査メニューとなっているのか、事前にしっかりと確認しておくようにしましょう。