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狭小住宅を建てるなら必ず押さえておきたいリスクと注意点

2024.03.27
岩井

WRITER

岩井 数行

二級建築士 e-LOUPEインスペクター

建築事務所を経て2010年に株式会社テオリアハウスクリニック入社。床下調査や断熱事業での現場経験を活かし、現在は戸建て住宅インスペクション事業に携わる。JSHI公認ホームインスペクター。既存住宅状況調査技術者。蟻害・腐朽検査士。

こんにちは。e-LOUPEの岩井です。今回は狭小住宅の注意点についてご紹介していきます。

狭小住宅の調査にお伺いする機会は年々増えており、その人気の高さを日々感じています。

購入を検討されている方や購入後にどのようなことに気をつけるべきかを知りたい方はぜひ参考にしてみてください。

狭小住宅が人気の理由

狭小住宅が人気の理由として「いい立地」と「手頃な価格」が考えられます。

地価の変動でマンション価格が高騰を続けており、「土地や建物のコストを抑えた一軒家の方が安くつくのでは?」と多くの人が考えるのは自然な流れと言えるでしょう。

また、狭小住宅が立つような場所は駅から遠くないいい立地が多いことや、単身世帯や夫婦のみの家族が増加していることもニーズとうまく符号した形だと思います。

岩井
岩井

この傾向はとりわけ東京都心部で強いです

戸建て住宅大手のオープンハウスグループさんは「東京に、家を持とう」というキャッチフレーズのもと数年で売り上げをグンと伸ばし、2023年9月期決算では売上高が1兆円超え、わずか3年ほどで約2倍となっています。

狭小住宅で購入前に想定しておくべきリスク

近年注目を集める狭小住宅ですが、購入時には狭小住宅ならではの注意点をしっかりと把握した上で検討されることをオススメします。

軒ゼロ物件での雨漏り

狭小住宅で注意すべきは雨漏りのリスクです。

狭小住宅は少しでもフロア面積を大きくするために、軒を短くする傾向があります。

しかし軒が短くなればなるほど、雨風の影響を大きく受けるようになります。

国土交通省が作成した長持ち住宅の選び方を参照してみましょう。

軒が長い建物と軒が短い建物で水をかける試験を行った時の様子が公開されていますが、軒が短ければ短いほど雨がかかる面積が広くなっているのが分かりますね。

もしメンテナンスが行き届いていなかったり、壁内に施工不良があった場合、外壁は雨に対して完全に無防備な状態になってしまいます。

築10年も経った建物ですと、外壁のあちこちにシーリングの割れが発生しているのは当たり前ですから、そう言った箇所から内部に雨水が侵入してカビや腐朽が発生することには気をつけなければいけません。

外周メンテナンスが困難


隣家との距離があまりにも近い場合は屋根や外壁に関する施工が行えない恐れがあります。

作業員が施工を行うには最低でも50cmほどは空間が必要です。それよりも間隔が狭いと材料を運ぶことや足場を立てることすらままなりませんから、施工を断られる可能性が高いです。

また足場を立てられる場合でも隣家への越境が懸念され、隣人の方と仲が良ければ快く許可をもらえないかもしれません。

万が一隣家の物を破損した場合の責任の所在なども十分考慮しておく必要があります。

隣家の音


隣家があまりにも近い場合に起こりうるのが音の問題です。

窓と窓が近くなることから、隣人の声が聞こえてきたり、反対にこちらの声が隣人に筒抜けになっているかも知れません。

特に窓がすぐ隣にある場合ですと物理的に侵入が可能である場合もありますから、心理面にも影響を与えてしまう恐れがあります。

内窓を設置すれば防犯・防音の対策になりますので、気になる方にはオススメです。

洗濯物のスペース

狭小住宅は1階が車庫と水回り、2階がリビング、3階が居室となっているパターンをよく見ます。

もし洗濯機やお風呂が1階にあって洗濯物を干すスペースが3階のバルコニーや屋上階のルーフバルコニーにしかない場合、洗濯のたびに階段を登り降りしなければなりません。

岩井
岩井

特に家族が増えた後は苦労するかも知れませんね

事前に動線を確認して、場合によっては乾燥機能付きの洗濯機を採用するなどの工夫も必要になると思います。

床下でのトラブル


万が一床下で漏水などのトラブルが発生した際、人が入ってメンテナンスを行うのが困難な場合があります。

狭小住宅は床面積が小さい分、高さを取って空間を広くしたいところですが、高さには制限があるため代わりに床高を低くしようとする傾向があります。

極端な例ですと床高が10〜15cmほどしかない事もあり、そういった建物ではちょっとした事でも対応が非常に困難で、床を壊さないと対応できない・・・ということもあるかも知れません。

湿気や水害

床高を下げる代わりに地面よりも低い位置に半地下を作って空間を確保する場合がありますが、湿気がたまりやすいことと、水害に弱くなってしまうことは考慮に入れておくべきでしょう。

特に木造住宅は水に対してとても弱いです。

資産価値の低下

もし将来的に建物の売却も視野に入れている場合、狭小住宅は資産価値の維持が難しいので注意しましょう。

建物は30年で減価償却を終えますので、建物部分の値段はタダに等しくなります。

その際に値段がつくのは土地になりますが、狭小住宅は元々さほど広くない土地をさらに分割して建てられているためかなり売りづらいようです。

立て直すにしても隣家とのスペースを考えると、建っていた住宅よりもさらにコンパクトにせざるを得ない可能性が高いです。

岩井
岩井

買い手がつかなかったり、安い値段にせざるを得ないかも知れません

新築時の保証だけでは安心できない理由

日本の新築住宅は品確法により10年の保証期間を設けることが義務付けられています。

保証がついてるから安心、と言いたいところですがそういうわけにもいかない事情があります。

たとえば先ほどご紹介したような外壁は、早いケースだと6〜7年もすれば壁に黒い雨垂れの跡ができてしまう場合があります。

しかしメーカーの保証はあくまでも不具合のみですから劣化は対象となっていません。

また、そもそも足場を組んだり散水試験が行えないというケースもあり、不具合があるかどうかの確認すらままならないという場合もあるので注意が必要です。

狭小住宅を購入の際は絶対にやってほしいこと


これまでの経験上、狭小住宅かどうかを問わずたとえ新築であっても指摘事項が全くない家はほぼ皆無です。

狭小住宅では通常の家よりも床下や小屋裏での万が一のトラブル発生のダメージは大きく、住み始める前の確認は必須と言えるでしょう。

  • 壁や天井の境目に雨漏りはないか
  • 外壁に穴や隙間が空いていないか
  • 床下で水漏れが起きていないか
  • 湿気は溜まっていないか

などは十分確認しておきましょう。

また10〜15年のメンテナンスも忘れずに行うことをおすすめします。

また、建物の状況によってはメンテナンスサイクルが早くなっている事も十分考えられるので注意が必要です。

さいごに


今回は狭小住宅の注意点についてお話ししてきました。

家は購入して終わりではありません。

狭小住宅は立地の良さや手頃な価格が魅力的ですが、多くのリスクが付きまとうことは十分考慮しておくことをオススメします。

何かトラブルがあった時の対応がとりわけ面倒なのが狭小住宅ですから、住み始める前に現状の把握をしっかりと行い、ずっと住み続けるに足るお家なのかは慎重に検討する必要があるでしょう。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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