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建売住宅は寿命が短いの?噂の真相と長持ちさせる方法を解説

2024.05.14
岩井

WRITER

岩井 数行

二級建築士 e-LOUPEインスペクター

建築事務所を経て2010年に株式会社テオリアハウスクリニック入社。床下調査や断熱事業での現場経験を活かし、現在は戸建て住宅インスペクション事業に携わる。JSHI公認ホームインスペクター。既存住宅状況調査技術者。蟻害・腐朽検査士。

建売ってどれくらいもつの・・・?
平均寿命ってどれくらいなんだろう・・・?

建売住宅の購入を検討している方にとって、気になるポイントの一つが寿命についてではないでしょうか。建売住宅は注文住宅よりも寿命が短い、なんて話もあるので多少心配ですよね。そこでこの記事では、建売住宅の寿命について、その平均寿命や注文住宅との比較、寿命を伸ばすためのポイントについて解説します。

建売住宅の寿命の目安とは

建売住宅の寿命については法定耐用年数や経済的耐用年数など様々な目安があるため、一概に「何年です」とは言えません。ただ、これらの目安を合わせると20年から60年が建売住宅の寿命となります。

法定耐用年数 22年 国税庁が定めている税務上の戸建て住宅の法定耐用年数
経済的耐用年数 20〜30年 不動産の価値がなくなるまでの年数
物理的耐用年数 40〜60年 建物の躯体等が劣化で使用できなくなるまでの年数

参考:国土交通省資料

また、国土交通省の土地統計調査によると、日本の住宅の利用期間は平均30年という数字がでています。対して、アメリカは55年、イギリスでは70年です。もちろん建物の寿命に関しては様々な要因があるため一概には言えませんが、日本の住宅は他国と比較して短い、ということが言えます。

しかし、これらは日本の木造戸建て住宅の数値であるため、建売住宅、注文住宅という括りでははっきりとした寿命の違いはデータとしてありません。

建売住宅と注文住宅はどちらが長持ち?

では、建売住宅と注文住宅ではどちらが長持ちさせやすく寿命が長いのでしょうか。実際には建売であっても注文であっても寿命はそうそう変わらず、どちらも十分に長持ちさせることができます

建売住宅 完成した建物を購入する
注文住宅 契約後に建て始める

建売住宅と注文住宅の違いは、先に建てられた物件を購入するか、建てるところから始めるかの違いだけです。どちらも建築基準法に従って建てられる上、住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)で品質が保証されています。つまり、どちらも同じ基準で建てられた家であれば寿命は変わらない、ということになります。

建売住宅の寿命が縮む原因

住宅は完成したその瞬間から徐々に劣化していきます。劣化する原因は様々ですが、建売住宅の購入後にその原因に対してどう対応するか、その判断も住宅寿命に大きく影響を及ぼします。まずは住宅の寿命に影響を与える原因について見ていきましょう。

雨風や太陽からの紫外線による劣化

日常的な自然な劣化に関しては基本的に土地の周辺環境によります。建売住宅でも注文住宅でも差は無く、都心でよく見るペンシルハウスのような隣家との距離が近い住宅だと雨風や太陽からの紫外線を受けにくく、劣化しにくいとも言えます。

居住する事による床壁や設備機器の破損

主に内装(建具や床壁)に関しては外的要因よりそこに住む人の使い方によって寿命の差が生じる要素となります。設備に関しては高級品の方が劣化に強い傾向ですが、換気扇やガス機器などは耐用年数が定められており安全性の観点からそのタイミングで交換することが望ましいと言えます。こちらも建売と注文であまり差が無い部分です。

白蟻害や獣害、植栽による傷み

外壁が健全な状態であっても、動植物による建物劣化は起こりえます。具体的な例として、シロアリ被害やツタによる壁内部の破損、コウモリやネズミによる糞害による天井材の劣化などです。これらに関しても建売・注文関係なく、日ごろからいかに手入れができているかで寿命が変化します。

災害による劣化(地震や洪水)

寿命を迎える前に災害で住宅寿命が終わってしまうことも十分に考えられるます。災害の多い日本の住宅においてこの点は重要です。

建売住宅でも建築基準法による一定の耐震性は確保されていますが、その指針となる耐震等級に関しては建売の場合取得していないケースもあります。(耐震等級3相当という表現)

そのため、建売だと耐震性能が低い、または正確には判断しづらい物件があることも事実です。注文住宅であれば事前に耐震性能に関して検討することができるため、耐震等級3といった最高ランクの耐震性をもつ住宅にすることも可能です。耐震性能(対災害性能)は完成後の補強が難しい場合も多く、注文住宅の方が有利と言えます。

建売住宅を長持ちさせるための解決策と物件の選び方

では、建売住宅の寿命を長くさせるためには何が必要なのでしょうか。使用する部材の品質を知っておくことも大切ですし、メンテナンスについて理解することも大切です。例えば、どんなにすぐれた住宅であっても、メンテナンスを一切せず長期間性能を保つことは困難です。そのため、劣化の進行を遅らせるための定期的なメンテナンスが建売住宅の長寿命化には必須となります。具体的なポイントを見てみましょう。

手入れのしやすい物件を選ぶ

「ペンシルハウスは劣化しにくい」と記載しましたが、隣家に近い物件は外壁状況を確認することが難しく、足場をかける事も困難な場合が多いです。その結果、劣化事象を見落とす、劣化が生じていても直すことが困難になり、結果として建物の寿命を縮める原因となってしまいます。

住宅地

(写真)狭小地は足場の設置が困難な場合がある。

床下点検口

(写真)点検口があるかはしっかり確認しておこう。

室内では、床下や屋根裏の点検やメンテナンスを実施するためには点検口が必要となります。建売住宅の場合、そもそも点検口が無いこともあれば、床下が低くて入れなくて使えない、といったケースもある点は注意です。

手入れしやすい物件の選び方

  • 家の周りを歩ける程度の敷地幅がある
  • 床下点検口や天井点検口がある
  • 床下や屋根裏に入れるほどの高さがある

地盤などの条件がよい物件を選ぶ

自然災害の多い日本において、突然の災害で家を失うリスクはどうしても生じます。建物本体の性能がいくら良くても、地震で倒壊したり液状化で建物が傾いてしまえばそこで建物の寿命は終わりを迎えることになってしまうのです。また、洪水や土砂崩れなどでも建物に被害が及ぶ可能性もあります。

洪水や土砂崩れ、液状化についてはハザードマップでその土地のリスクを知ることができますので、建売住宅を選ぶときには活用するようにしましょう。

地盤などの条件がよい物件の選び方

  • ハザードマップ等でリクスの低い物件を選ぶ

計画的にメンテナンスをする

住み始めてから10年を経過するころからメンテナンスが必要になってきます。また、同時にそれに伴う費用が必要にもなります。住み始めと共に今後の住宅メンテナンスの計画やそれに伴う費用の準備を進める事が理想的です。

屋根 塗装:10〜20年ごと
外壁 塗装・目地打替え:10〜20年ごと
設備 給湯器更新など:約10年ごと
床下 防蟻処理:5年ごと

主なメンテナンスの内容

住み始める前から保証やメンテナンスについて相談できることが望ましいですが、建売の場合どうしても売買の話がメインとなるため、将来のメンテナンスに関する確認が弱くなってしまうことがあります。

計画的なメンテナンスをするために

  • メンテナンスや保証がしっかりした物件を選ぶ
  • 定期点検やアフターメンテナンスがあるか確認する
  • メンテンスのスケジュールを把握しておく
  • 修繕費用を準備しておく

まとめ

住宅が劣化することは必然で、建売住宅であっても注文住宅であっても建物寿命に変わりはありません。そのためいかに劣化しくくさせるかという事前の準備と、それを維持するメンテナンスが大変重要になります。最初から設計できるという点で注文住宅のほうが対策しやすいですが、建売住宅であってもメンテナンスを十分に行えば長期間住み続ける事は十分可能です。

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