e-LOUPEの旬ネタコラム
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ホームインスペクションは雨漏り対策に有効?調査の流れを紹介
WRITER
鳥居 龍人
二級建築士 e-LOUPEインスペクター
「これから家を買おうと思っていますが、雨漏りが心配です。ホームインスペクションではどのような調査を行いますか?」
今回はこのような疑問にお答えするため、雨漏りの定義や調査法について詳しく解説していきます。
目次
雨漏りの分類
雨漏りは「一次被害」と「二次被害」に分類されます。
雨水が建物の内部に浸入することを一次被害、浸入した雨水によりもたらされる様々な被害を二次被害と呼びます。
一次被害
一時被害の原因として
- 瓦・仕上げ材下の防水シート等の建築材の劣化
- 雨樋等の設備の経年による劣化
- 施工の段階での欠陥
- 台風や大雪による屋根材の破損
- 屋根・外壁などからの雨水の浸入
などが挙げられます。
二次被害
一方、二次被害の例としては
- 断熱材の大幅な性能の低下
- 木材の腐朽
- シロアリ被害のリスクの増加
- 天井や室内への雨染みによる美観問題
などがあります。
他にも雨漏りの二次被害は、家具や床を濡らしてしまう、といった例が挙げられますが、建物そのものにも、修理が難しい深刻な被害を与えます。これが原因で建物の寿命を縮めてしまうのです。
そして雨漏りの厄介な特徴として木材に雨染みが生じた際にはその後が残ってしまいます。
もし物件を売却しようと考えていたりすると、染みが原因で少し売却金額が下がるかもしれません。
最近の住宅では室内に無垢材を使用する内装が流行っていますが、これに水シミが生じた場合、きれいに染みを落とすのはかなり難しいでしょう。
雨漏り被害の調査方法
ホームインスペクションでも「雨水の浸入の有無」は最重要の調査項目であり、ホームインスペクションを利用することで雨漏りが発生しているのかを見分けることができます。
基本は目視調査
ホームインスペクションにおいて、雨漏りの有無は基本的には「目視」で確かめることができます。
もし一次被害が発生していた際にはそれにいち早く気づき、応急処置の修理を行って被害の拡大を食い止めることが必要となります。
天井、壁、ドア枠、窓などに注目し、
- 壁や床の濡れ
- 窓枠の濡れ
- 壁や天井の局所的なカビ
- 壁や天井のシミ
などがないかを確かめます。
上記の項目に心当たりがあるならば、雨漏りの可能性が疑われます。
その他には雨水が垂れる「音」やカビや腐朽菌が生じているようであれば「臭い」で気づけることもあります。
天井以外の場所でも雨漏りは発生する
そしてこれらは屋根や外壁などで生じた雨漏りであれば被害が起きた際に気づけるかもしれませんが雨漏りは床下でも発生することがあります。
例えば、床下の基礎コンクリートを立ち上がり部分と底版部分を分けて施工するケースがあります。
その場合は立ち上がりと底版の間に止水材と呼ばれる水を内部に進入させない材料を内部に埋め込み施工を行いますが、その止水材に隙間が生じていたり適切に埋め込まれなかった場合、外の雨水が立ち上がりと底版部分のコンクリートの打ち継ぎ部分を伝って内部に進入します。
またその他にも外部へ基礎を貫通してる各種配管の周囲からも止水処理が適切に行われないと水が伝い内部に入ってしまうことがあります。
そしてこの各種配管を伝い水が入る状況になってしまうと配管からの水漏れなのか外からの水の浸入なのかが分かりづらくなるため注意が必要です。
更なる被害につながるケースも
とはいえ、それらに思い当たる症状がなければ大丈夫とも言い切れません。
実際に雨漏りに気づかず、気づいた頃には腐朽やシロアリの被害が発生しており、部材の一部交換だけで数十万、雨漏れに関する修繕をしっかりすると数百万円という額の出費を余儀なくされたケースもあります。
確認する箇所や修繕の箇所によっても金額は変わりますが、屋根の修理ともなると足場の設置費用などで想定よりも金額が大きくなることも多く、多少でも気になることがあるのであれば専門家に調査を依頼するのがやはり確実です。
ホームインスペクションは「一次調査」
ここで注意しなければいけないのは、ホームインスペクションはあくまでも「一次調査」であり、精密な検査とは役割が異なるということです。
人間の体でいうならば、ホームインスペクションは健康診断、病院で点滴を打ったり手術を行うのはより精密な検査に当たります。
ホームインスペクションでは雨漏りの有無を確かめることはできますが、厳密に何が原因なのか、修繕にはどのような手法を取るのがベストなのか、といった詳細な対策についてはより特化した専門家への依頼が必要となります。
もしホームインスペクションで天井や小屋裏で雨漏りの痕跡が確認された場合、引き渡し前であれば売主に修理を依頼しましょう。
具体的な調査方法にも注意が必要
また、雨漏り調査と一概に言ってもその実態はどのインスペクション業者使うか、どんなオプション調査を追加するか、などで異なってきます。
調査内容によっては例え「指摘事項なし」と診断されたとしてもそれが確実に安全であることを意味するわけではないので注意が必要です。
例えば点検口から小屋裏の中を覗くだけ…というような診断方法では、大規模な雨漏りや点検口付近で発生している雨漏りでない限りは発見は難しいと思われます。
もし確実に雨漏りの不安を取り除きたいのであれば、オプション調査もしくはそれと同等の調査を標準調査として行っている業者に依頼することをおすすめします。
ホームインスペクションでの雨漏り事例
もしかすると「調査が高額になってしまうし、調査員の方も点検口からの確認で大まかには判断出来ると言ってるから小屋裏進入のオプションは頼まなくてもいいかな」と思われるかも知れません。
ここで実際に私が実施した中古住宅のホームインスペクションでの事例をご紹介します。
依頼主様は以前売主に紹介してもらった業者でホームインスペクションを実施済みでした。しかし「売主がインスペクションしてくれたけど点検口から覗くだけの調査だった。念のために小屋裏内部を詳しく調べたい」とのことで依頼を受けました。
小屋裏はスペースの関係上、進入してからは右側に一方通行で進むしかない状況でした。
そのため、前回のホームインスペクションでは点検口を開けた正面と右側の確認できる範囲のみの調査だったようです。
確かにその範囲には特に指摘事項は見受けられませんでした。
しかし小屋裏の内部に進入して梁を伝っていったところ、ちょうど点検口からは見えない位置まで回り込んだ真裏の部分で雨漏りの発生を確認しました。
屋根の下がり棟の金物下から水が入っているようで野地板の部分は黒く変色し、木材の含水率(どれだけ木材が水を含んでいるのかを示す数値)は50%を超えている様子。
一般的に木材が腐朽し始めるのが30%からであることからも、基準値を大きく超える水分量であることが分かります。
被害状況は一度に多量の水が進入しているわけではなく、少しづつ染み出している水が天井面に敷かれている断熱材に垂れているような状況でした。
もし直接水が天井面に滴っていれば染みがすぐにできて発見も容易だったと思います。
しかし近年の住宅では天井面が断熱材で覆われていることから雨漏りが発生してから異変が表面に現れるまでの期間が長くなりやすく、その分見えない場所で被害が大きく進行してしまうケースもあるのです。
この調査結果には雨漏りはしていないと聞いていた買い主も驚いており、点検口周囲からの確認がいかにあやふやなものなのかを決定づける事象だと言えるでしょう。
もし雨漏りの不安を確実に解消したいのであれば小屋裏は進入調査を実施されることをおすすめします。
さいごに
今回は雨漏りに潜むリスクやホームインスペクションでの調査事例についてご紹介してきました。
e-LOUPEでは小屋裏や床下への進入調査を標準で実施しています。そのためか、雨漏りがずっと放置されて他の様々な被害を併発している建物の調査をしたり、依頼主様に修繕には莫大な修理費用がかかるであろう旨をお伝えする機会もたくさんありました。
家の寿命を伸ばす一番の方法はやはり節目節目で建物の状態を正確に把握することです。
特に新しい家に住み始める前には異常がないかチェックをしておくのがおすすめです。
こちらのページではホームインスペクションについてより詳しく解説していますので、もし興味を持っていただけたようでしたらぜひ一度目を通してみてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
「見えないところへの徹底した追求」がe-LOUPEの基本方針です。