e-LOUPEの旬ネタコラム
- 中古戸建て
中古住宅の内見では何を見る?ポイントを徹底解説
WRITER
鳥居 龍人
二級建築士 e-LOUPEインスペクター
こんにちは。e-LOUPEの鳥居です。
「どんな中古住宅ならば安全ですか?」というのはよくいただくご質問です。
建物は複雑ですから簡潔に説明するのは難しいものの、やはり知っておいて損しない知識はたくさんあります。
今回は戸建ての中古住宅を購入時のマインドセットや内見での確認ポイントについて、とくに知っておいて欲しい重要な点を取りあげてご紹介していきます。
目次
中古住宅の購入で意識すべきこと
具体的なチェック箇所のご紹介の前に、まずは内見の際に意識しておくべきいくつかの心構えについてお伝えさせていただきます。
「問題ないですよ」に根拠はない
中古住宅の内見にあたり、まず前提として頭に入れておくべきは「リスクは必ずある」ということです。
中古住宅は新築に比べて値段も安く、立地条件にも恵まれている場合が多いので魅力的に感じる機会が多いかも知れません。
しかし多くの中古住宅では
- 外壁塗装
- 設備交換
- シロアリ対策
といった建物の保全メンテナンスが何も行われていません。
中古住宅の売主は「何も問題ないので大丈夫ですよ」とよく口にしますが、実際に何か根拠があるケースはほぼ無いと言えるでしょう。
建物全体の確認は必要不可欠です。
そもそも売主ですら、自分の家の小屋裏や床下がどうなっているかなんて分かりません。
アフターサポートは得られない
中古住宅の購入では売主との「品質の価値観の違い」を認識しておくことも大事なポイントです。
新築住宅では構造や設備に何か問題があった際には売主が対応してくれますし、傷や汚れなども引き渡し前であれば修繕してくれます。
しかし中古住宅ではそういった対応はほとんど見込めません。
傷汚れは「中古なのでこういうものです」となりますし、設備の劣化も「じゃあ交換してくださいね」で済まされます。
売主側の意見を鵜吞みにするのは要注意です。
仲介業者含め「中古なんだから多少の不具合は当たり前でしょ?」くらいの意識の方は多いです。
不具合は”隠されて”いる
中古住宅にはリフォーム済の状態で売りに出され、設備機器や建具が最新で見た目も流行にのっているような物件をよく見かけます。
しかし床下や小屋裏など隠れてしまう箇所は建築当初から何も手をつけられていない可能性があるので注意が必要です。
先日お伺いした物件がまさにそんな状態で、小屋裏の梁は建築基準が満たされておらず床下の部材はシロアリ被害だらけになっていました。
しかもリフォーム会社もそれを認識した上で「構造体には触れない契約だったので何もしていない」とのことだったのです。
やはり悪意を感じてしまうことも珍しくありません。
言った言わない問題は日常茶飯事
中古住宅の現況引き渡しでは「建物に付随するものは建物とみなす」という原則があります。
キッチン・洗面台・浴室などの設備は建物に定着していることから建物の一部とみなされますし、建物外周に植えられている木なども建物と一緒に引き取る流れとなります。
カーテンやエアコンなどは基本的には売主に決定権がありますが、何を撤去して何を残すかは買主と打ち合わせて決めることができます。
この時注意すべきは「言った言わない問題」です。
中古住宅は売買契約から物件の引き渡しまでが長期化する傾向にあります。
もし内見の際に口約束をしたとしても、契約時には売主の気が変わってしまう可能性もあるので注意しましょう。
契約の話の際はメールやボイスレコーダーなど、形に残るものを通してのやり取りがオススメです。
内見時の建物チェックのポイント
ここからは、内見時に具体的に確認するべき箇所について解説します。
その際はなるべく多くの写真を撮影しておくのがオススメです。
後で細部を思い出したり、他の物件と特徴を比較するのにも役立ちますし、後で専門家に見てもらって意見を聞く、という使い方もできまよ。
床下には建物の重要な情報がたくさん
床下には建物の構造に関する重要な情報がたくさん含まれており、何はともあれチェックしなければいけない場所と言って過言ではありません。
床下の確認は専門家のように含水率計やクラックスケール、金属探知機などを用いるのは非現実的だと思いますので、点検口からのぞいて調べるのがいいのではないかと思います。
スマホのライトだけでなく、明るくて照射距離が長い懐中電灯があると便利ですよ。
基礎が壊れていないか、木材に腐朽が発生していないか、シロアリ被害がないかなどを確認しましょう。
シロアリは「蟻道」と呼ばれる土のトンネルを基礎や束に作って建物に侵入してきます。不自然な土がついていればシロアリがいる証拠となります。
床下で視覚情報以外に確認した方がいいのは「臭い」です。
下水配管からの水漏れや構造部材の腐朽が発生していると異臭が発生する可能性がありますので、手がかりの1つになると思います。
ちなみにもし床下点検口がなかった場合、私としてはそういった物件は思い切って見送ってしまうのがいいのではないかと思います。
点検口は重要な床下を管理するためのものですから、それがないのは設計思想に疑問が残ります。
窓周りのクロス破れや水染み
関東圏でも東日本大震災窓のような大きな地震を経験した建物ですと、窓周りのクロスがまあまあの率で破れていたり、ひび割れが入っているという現象が起きています。
多少は仕方ありませんが、あまりにも多いようですと注意が必要です。
とくに構造壁があるはずの外壁に面している壁に多くのひび割れが見受けられる場合、耐震性の低さをリスクに入れる必要があるでしょう。
ヒビがあったらダメというわけではありませんが、かなり揺れた建物だろうという判断の材料になります。
ただしクロスが張り替えられている場合もあるので、ひび割れがないからといって安全というわけではありませんので注意しましょう。
窓周りでもう1つ見た方がいいのが水染み跡の有無です。
窓周りは家の中でも雨漏りが起きやすい部分であり、窓枠の上部や中部に染みがあるようですと雨漏りが発生している可能性は大きくなります。
配管からの水漏れ
中古住宅の配管では、パッキンが劣化して水漏れを起こしている場合があります。
配管からの水漏れは悪臭や害虫、カビの発生の原因になることもあるので注意が必要です。
配管の水漏れを確認する際のポイントが「時間差」です。
水を流した際にすぐに水漏れが起きていることだけでなく、流した直後は何もなくても時間差でじわじわと染み出してくる場合もあります。
配管の水漏れ確認では少し時間をおくことを意識してみましょう。
壁と天井の境目の水染み
雨漏りという面でもう1点確認がオススメなのが、壁と天井の境目の水染み確認です。
壁と天井の間の壁の部分のクロスを確認した時に、波打って黄色くなっていたり、跡っぽいものが見える場合には水が入っている可能性が考えられますし、和室などの壁と天井の境目の木材に染みができていた時は雨漏りが疑われます。
基礎や換気口の高さ、クラックの有無
建物外周から目視が可能で重要度の高い部位は、やはり基礎だと思います。
基礎で確認をオススメするポイントとして、基礎高、換気口の高さ、クラックなどが挙げられます。
まず基礎からの高さですが、あまりにも低すぎると床下の確認がうまく行えなくなってしまい、メンテナンスに支障をきたす確率が高いです。
ここ10年〜15年ほど前から基礎の高さは400mmが一般的です。古い建物でもできたら300mm以上が望ましいですね。
次に換気口の高さですが、地面にあまりにも近い場所に設置されていると、雨が降った際にその水がそのまま床下に入りやすくなり、床下のカビや腐朽のリスクも大きくなります。
最後にクラックですが、営業マンによってはちゃんと確認しないまま「これくらい全然問題ないですよ」と言い張られる場合もあるので鵜呑みは禁物です。
やはり買主自身が幅や深さを測って安全かどうか(幅0.5mm以内か)を判断するのがいいと思います。クラックスケールはホームセンターで数百円程度で購入が可能です。
クラックについて幅以外に注意すべきものとして数や向きがあります。
たとえ小さなクラックでも幅1m以内に3つも4つもあるようですと、少し不安が残ります。
多くのクラックはコンクリートの収縮で縦向きにできるものですが、もし横向きにできていた時は要注意です。
建物というのは上から重量がかかるものですから、それなのに横方向に収縮ができるというのは何かしら問題がある可能性を疑わざるを得ません。
クラックの注意点として、建物の中には基礎の表面にモルタルが塗られている場合もあります(化粧モルタル)。
化粧モルタルのひび割れは建物への直接の影響はありません。ただし反対に基礎の問題が化粧モルタルで分からなくなっている場合もあるので油断は禁物です。
化粧モルタルの内側がどうなっているかは外側からは判断できませんので、室内で点検口からのぞいて基礎の立ち上げりを確認するか、床下に進入しての確認になります。
外壁の劣化具合
外壁の確認ポイントは大きく3つあり、
- チョーキング
- コーキング
- クラック
です。
チョーキングとは外壁を指で触った時に白いチョークの粉っぽいものが指につく現象のことをいい、塗料の分解が進んで塗り替えが必要なことを意味します。
コーキングはサイディングとサイディングをつなぐ部分で、切れ目が目立っているようだと打ち直しが必要です。
致命的な問題ではありませんが、修繕費用が必要なことや瑕疵保険に高い確率で加入できないことを覚えておきましょう。
外壁にもクラックはあり、クラックの幅が大きい場合やクラックの数がたくさんある時は耐久性の問題が疑われます。
また、クラックは上から塗り直されたり間を埋めて補修されている戸建てがたくさんありますが、元々の状態によっては修理さえすれば何も問題がなくなるわけではありません。
修理がされた跡を見て、元々のクラックは大きかったであろう形跡が残っている場合は構造的な弱さを疑う必要があります。
あまり知られていませんが、植栽も建物にとってリスクになり得ることが多いです。
もし蔦や枝が伸びていた場合、建物に侵入して床下の換気状態を悪くしたり、外壁の防水を食い破ってしまう可能性も考えられますので床下もしっかり確認するのがオススメです。
バルコニー下の染み
バルコニーには塗装やシート等によって防水層が施工されますが、経年でそれらの防水が切れると水が入り、下から見ると水染みのようなものがついている場合があります。
すぐにダメというわけではありませんが、場合によってはバルコニーからの水が建物内部に浸入する可能性も考えられます。
室内の状況とセットで確認をしましょう。
バルコニー下と関連して軒天(屋根の裏側)も構造体ではないものの、あまりにも水染みが多いようですと屋根の防水に何か問題があるのかも知れません。
部分的な修繕だけでなく、雨漏りのリスクを意識した方がいいでしょう。
さいごに
今回は中古住宅の内見時に見ておいた方がいい箇所や心得ておくべきことについてお話ししてきました。
該当する特徴がいくつも見受けられるような建物であった場合、購入を見送るのが無難だと思います。ただし、必ずダメというわけではありませんし絶対に安全というわけでもありません。
もし判断に迷う場合は専門家による高精度な調査を実施するのがオススメです。中古住宅のホームインスペクションについてはこちらのページでも詳しくご紹介していますのでチェックしてみてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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