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買ってはいけない中古住宅の条件は?

2024.09.03
鳥居

WRITER

鳥居 龍人

二級建築士 e-LOUPEインスペクター

建築事務所を経て株式会社テオリアハウスクリニックに入社。前職での現場監督経験から、施工から設計まで幅広い知識と経験を持つ。現在はその経験をもとに戸建て住宅のインスペクション業務に携わる。JSHI公認ホームインスペクター。既存住宅状況調査技術者。

昨今の物価上昇に伴い、中古住宅を選択肢に入れる方が増えています。確かに中古住宅は新築に比べてコストを抑えられますが、その分リスクやデメリットも潜んでいます。本記事では、後悔しないために避けるべき中古住宅の条件について、建物、土地、近隣環境の観点から詳しく解説します。

構造・建物から見る「買ってはいけない中古住宅」

① 2000年以前に建てられた住宅

日本に住んでいる以上、地震リスクは無視できません。建物が建てられた時期によって、耐震性能に大きな差が生じます。

昭和の住宅
1981年5月31日以前に確認申請を受けた住宅は「旧耐震基準」、1981年6月1日以降は「新耐震基準」に基づいています。しかし、1995年の阪神淡路大震災を受け、2000年6月1日から新たな「2000年基準」が制定されました。この2000年基準は2024年現在でも有効で、最新の新築もこの基準で建てられています

旧耐震基準 〜1881年5月31日
新耐震基準 1981年6月1日〜
2000年基準 2000年6月1日〜

 

「旧耐震」や「新耐震」の住宅は今後の大地震での倒壊リスクがあり、2000年基準を満たしていない物件は住宅ローン控除や税制優遇を受けられない可能性もあります。補強工事で耐震基準を満たすことは可能ですが、コストや手間がかかるため現実的ではない場合も多いです。

そのため、中古住宅を選ぶ際には「2000年基準」以降に建てられた物件を選ぶことを推奨します。

② 購入後に一度もメンテナンスを行っていない住宅

木造戸建て住宅では、外壁は15~20年、屋根は20~25年で劣化が進みます。外壁の塗装が剥がれたり、屋根の瓦がズレたりすると、内部への水の浸入やさらなる劣化が進むリスクがあります。

シーリングの劣化

(写真)外壁のシーリングが劣化している住宅。

雨漏り

(写真)メンテナンスを怠ると雨漏りなどの問題が起きることも。

また、水回りの配管やシロアリ対策も定期的なメンテナンスが欠かせません。シロアリの侵入は建物全体に深刻な被害を与える可能性があるため、防蟻処理が重要です。

メンテナンスの具体例

外壁塗装、屋根塗装、給湯器交換、水回り交換、シロアリ対策など

売主から「購入後、一度もメンテナンスを行っていない」と告げられた場合、その住宅に潜むリスクを認識する必要があります。外見に問題がなくても、内部では腐食や劣化が進行している可能性があり、築20年以上の住宅では特に注意が必要です

このような物件を購入する際は、専門家による詳細な調査を依頼することが重要です。隠れた不具合が見つかれば、購入前に修繕費用の見積もりを確認し、必要に応じて購入を再考することができます。定期メンテナンスがされていない住宅にはリスクが多く、慎重な判断が求められます。

③ 床下や小屋裏にアクセスできない住宅

床下や小屋裏にアクセスできない物件は、メンテナンスが難しく潜在的な不具合が見つかりにくいリスクがあります。

特に中古住宅をリノベーションした際に、床下点検口を塞いでしまうケースには注意が必要です。シロアリ被害や配管の水漏れといった問題が発見されにくくなることで、室内に問題が及んでから気づくことになるためです。また、修理費が高額になる可能性も高くなります。

1.点検口がない

写真のような床下点検口がないとメンテナンスや修理を行うことができない。
2.床下に障害物がある

通れない床下

点検口があっても配管などで通ることができないことも。
3.床高が低い

床高の低い床下

写真のように床下の高さが20cmしかなくて入れない物件もある。

同様に、天井点検口がない物件も注意が必要です。天井裏の断熱材の劣化や雨漏り、電気配線の不具合などが発見できないため、後から重大な問題が発覚するリスクがあります。

こうした物件を選ぶ際には、点検口の有無を確認し、必要に応じて点検口を新設することができるかどうかを検討することが重要です。点検口が設置されていない物件は、将来的なメンテナンスや修理が困難になる可能性があります。

④ 床の傾きが大きい

中古住宅の床の傾斜は、一般的に6/1000(1メートルあたり6ミリメートルの傾斜)以内が基準とされています。この基準を超える傾斜がある場合、建物全体が同じ方向に傾いているか、部分的に陥没している可能性があります。

床の傾斜が著しい場合、建物の構造に問題がある可能性が高く、購入を検討する際には注意が必要です。


経年劣化や家具の配置によっても床の傾きが生じることがありますが、これが大きいと日常生活に支障をきたす可能性が考えられます。また、三半規管が敏感な方の場合、6/1000以上の傾斜で頭痛や吐き気といった体調不良が引き起こされることも多いです。このような状況が続くと、生活の質にも大きな影響を及ぼしかねません。

物件を選ぶ際には、床の傾斜を確認し、必要に応じて専門家による詳細な調査を行うことが重要です。傾斜が大きい場合、修繕や補強が必要になることが多く、これには高額な費用がかかる可能性があります。慎重な判断が求められるポイントですね。

土地・敷地から見る「買ってはいけない中古住宅」

① 敷地境界が曖昧

物件を購入する際には、自分の土地の範囲が明確であることが非常に重要です。しかし、中古住宅では敷地境界を示す杭が無くなっていたり、風化や土砂に埋もれて見えなくなっていることがよくあります。これが原因で隣地との境界が不明確になると、将来的なトラブルにつながる可能性があります

例えば、相続時に境界が不明確なために争いが起きるケースや、隣家の植栽が境界を越えて伸びてきた場合、どこまでが自分の敷地なのか分からず不満が募るといったことが考えられます。このような問題を避けるためには、物件購入時に境界が明確であることを確認することが大切です。

特に、境界が曖昧な場合には必要に応じて境界杭を再設置することを検討すべきです。これにより、後々のトラブルを未然に防ぎ、安心して土地を利用できる環境を整えることができます。

② 物件に隣接して小川がある

物件が川や用水路に隣接している場合、建物の傾きや地盤の安定性に影響を与えることがあります。特に、川沿いの地盤は水分を多く含みやすく、時間とともに建物が沈下するリスクがあります。また、豪雨時には川や用水路が増水し、氾濫や土砂崩れによる被害が懸念されます。

さらに、川辺が侵食されることで、敷地が狭くなる可能性もあります。過去の水害履歴を確認し、物件が洪水や土砂災害の危険区域に該当していないかを調べることが重要です。防災面を考慮し、適切な対策が講じられているかを確認することで、安心して暮らせる住環境を確保できます。

③ 擁壁の既存不適格(水抜き穴の確認は必須)

擁壁とは、崖状の土地の土砂が崩れないように支える構造物のことを指します。家の足元を支える重要な役割を担っていますが、建物に比べて見逃されがちです。しかし、擁壁にも「既存不適格」と呼ばれる状態が存在します。これは、現在の基準に適合していない擁壁のことです。

二重擁壁
例えば、玉石積みの擁壁や増し積みされた二重擁壁、大谷石の擁壁などが該当します。これらは、基準に適合していないため、将来的に住宅を建て替える際に支障をきたす可能性があります。特に、擁壁が基準不適合の場合、新たに住宅を建てることができない場合があるため、購入時には慎重に確認する必要があります。

また、擁壁には適切な間隔で水抜き穴が設置されていることが重要です。水抜き穴が無い、あるいは適切に機能していない場合、雨水などがたまり、擁壁が崩れるリスクが高まります。さらに、擁壁に著しいひび割れがある場合は、擁壁の再施工が必要になることが多く、その費用は非常に高額になる可能性があります。

購入を検討している物件に擁壁がある場合は、専門家に依頼して状態を詳しく確認し、将来的なリスクをしっかり把握しておくことが大切です。

④ 再建築不可の住宅

再建築不可の物件とは、以下のような条件に当てはまる土地に建てられた建物を指します。

  • 建物の敷地が建築基準法上の道路と全く接していない
  • 建物の敷地が建築基準法上の道路と接しているが、その接道部分の幅が2m未満である
  • 建物の敷地が幅員4メートル未満の道路や私道としか接していない

最大の問題は火災や地震などで建物を建て替える必要が生じても、法律上再建築ができない点です。これにより建物が損壊した場合、新しい建物を建てることが許されず、そのまま土地が活用できなくなるリスクがあります。

再建築不可の住宅地
再建築不可物件は、他の物件に比べて価格が安い傾向にありますが、その分デメリットも大きいです。例えば、将来的に売却する際に買い手が見つかりにくいことや、住宅ローンを借りる際に金融機関の審査が厳しくなることが挙げられます。

購入を検討する場合は、これらのリスクを十分に理解し、慎重に判断することが重要です。

⑤ 災害のリスクが高い

購入を検討している土地が大雨の際に道路が冠水する場所だとショックですよね。そこで、事前に災害リスクを確認することが重要です。国や自治体が提供しているハザードマップを利用し、洪水や氾濫のリスクを確認しましょう。

浸水
さらに、過去の土地の状態を把握するためには、国土地理院の地図を活用するのがおすすめです。この地図では、土地が過去にどのような状態であったかを確認できます。また、J-SHIS(地震ハザードステーション)では、その土地が地震に対してどれほど揺れやすいかを調べることができ、地震リスクの把握にも役立ちます。

これらの情報を事前に確認しておくことで、災害リスクを最小限に抑え、安心して生活できる土地を選ぶことができます。購入前には必ずこれらのリスクをチェックし、万全の備えをすることを心がけましょう。

近隣環境から見る「買ってはいけない中古住宅」

① 近隣の道路が抜け道になっている

住宅の購入を検討する際、特に幹線道路から少し外れた場所を選ぶ場合は、その道路が近隣の抜け道になっていないか確認することが重要です。物件情報だけでは、閑静な住宅街だと思っていても、実際には幅の狭い道路に多くの車が通行していることがあります。

このような状況では事故のリスクが高まるだけでなく、夜間でも騒音問題に悩まされる可能性があります。特に、頻繁に車が通る抜け道になっていると、静かな生活を期待していたにもかかわらず、思わぬストレスを感じることになるかもしれません。

購入前には、実際に現地を訪れて周囲の交通状況を確認し、朝夕のラッシュ時などにどれくらいの車が通るかをチェックしておくと安心ですね。

② 空き家が多い

空き家が多い地域は、犯罪リスクが高まるという調査結果があります。放火の危険性や動物が住み着いて悪臭を放つなど、さまざまなリスクが存在します。治安の良さを重視するのであれば、空き家が目立つ地域は候補から外すことを検討したほうがよいでしょう。

③ 治安が悪い・近隣住民の問題がある

内見は朝、昼、夜と時間帯を変えて行うことをおすすめします。これにより、近隣に迷惑な住民がいるかどうかを確認できるほか、夜間の治安を把握するのにも役立ちます。

また、時間帯を変えて内見すると、近隣環境を把握できるだけでなく日当たりの具合もわかりやすくなります。たとえば、日中でも隣家の影響で日が差し込まない物件は、生活に影響を及ぼす可能性があります。

住んでから気づくトラブルを避けるためにも、購入予定の物件や周辺環境をさまざまな時間帯で何度も確認することが大切です。周囲の状況をしっかり把握し、住み心地のよい場所を選びましょう。

④ 交通の利便性が悪い

物件の利便性は生活の快適さを大きく左右する重要な要素です。日本全体の交通インフラは向上していますが、駅までの徒歩時間やバスの運行頻度は日常生活に直結するため、事前にしっかり確認しておくべきです。

公共交通機関が利用しづらい場所に物件があると、日常生活が不便に感じるかもしれません。特に、車も通れないような狭い道に位置する物件では、緊急時に救急車が近づけないことが命に関わる可能性もあります。道幅が狭すぎる場所や、周囲にほとんど人が住んでいないエリアは、利便性と安全性の観点から避けたほうがよいでしょう。

また、普段の買い物や通勤・通学を考慮して、徒歩圏内にコンビニやスーパーがあるか、駅やバス停までの道のりが快適かどうかも確認しておくと、将来の不便を避けることができます。

「買ってはいけない中古住宅」を見分けるポイント

ここまで、買ってはいけない中古住宅の具体例をご紹介してきましたが、実際の物件探しで見分けるポイントが分かると安心ですよね。そこでここからは、どうすれば良い条件の中古住宅を見つけることができるのか、具体的なポイントを説明します。

① 具体的リスクを覚えておく

まずは、ここまでにご紹介した具体的リスクを頭の中に入れておくことが一番の対策になります。「この物件には水害のリスクがないかな」「土地に制限はないかな」といった疑問があれば、その物件を購入しても大丈夫かを見極めることができるはずです。

他にも、中古住宅の失敗談を探したり、実際に中古住宅を購入した人に話を聞くだけでも、中古物件を選ぶ際の知識が身につきます。また、内見時にはこれらリスクをリストアップしたチェックシートを作って持参すれば、自分で確認しながら内見することが可能です。

② ホームインスペクションを活用する

自分でチェックできるに越したことはないですが、「とは言えプロに見てもらったほうが確実だし…」と感じた方も多いと思います。そんなときはホームインスペクションを活用するのがおすすめです。


ホームインスペクションとは、第三者の建築士が建物の状態をチェックする住宅診断のことです。住宅購入時に「異常がないか確認しておきたい」という方をはじめ、最近では新築・中古関係なくホームインスペクションを活用する方が増えています。

中古住宅のリスクについても、雨水や構造の問題などホームインスペクションで把握することが可能ですので、安心して中古住宅を購入したい人にとっては役立つサービスとなるでしょう。

まとめ

中古住宅の購入は、住む期間やリスクを十分に理解した上で行うことが重要です。価格だけに引かれて中古住宅を購入すると、予期しないトラブルが発生する可能性があります。特に、小屋裏や床下の状況など直接目に見えない部分の確認は中古住宅選びで非常に重要です。

雨漏りやシロアリ被害など素人では判断が難しい問題も多いため、ホームインスペクションを利用するのも一つの手段です。専門家による詳しい調査で、見えない部分のリスクを把握することができます。

最終的には妥協できないポイントを明確にし、それに合致する物件を見つけることが大切です。購入後のトラブルを避け、満足のいく住まいに出会えるよう慎重に検討しましょう。

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