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建物状況調査ってなに?メリット・デメリットやホームインスペクションとの違いを解説!


WRITER
鳥居 龍人
二級建築士 e-LOUPEインスペクター
近年住宅を購入する際に、性能や品質など長く快適に住むために重要なポイントを事前に確認したいと考える方が増えています。その中で、「建物状況調査」という言葉を目にする機会も多くなり、検討されている方もいるのではないでしょうか。
しかし、建物状況調査がどのような物件を対象とし、どのような調査するのか、詳しく知らない方も多いかもしれません。そこで、このコラムでは建物状況調査とは何か、そしてホームインスペクションとの違いについて、分かりやすく解説していきます。
目次
建物状況調査とは?
目的 | 物件の現状どのような劣化事象が生じているかを確認する |
---|---|
調査範囲 | ・構造耐力上主要な部分(基礎、壁、柱、土台、梁など) ・雨水の浸入を防止する部分(屋根、外壁、開口部など) ・耐震性に関する書類の確認 |
対象物件 | 既存住宅 ※完成後1年以上経過した建物 または完成後1年未満で一度でも入居があった建物 |
建物状況調査とは、宅地建物取引業法(宅建業法)に基づいて実施される検査です。
国が定めた講習を修了した建築士が、既存住宅の状態を目視で確認できる範囲で検査します。「既存住宅状況調査」とも呼ばれ、主な目的は既存住宅の現状を把握し、劣化や不具合が生じているかを確認することです。調査対象が既存住宅であるため、築1年未満の新築住宅は対象外になっています。
建物状況調査では、以下のポイントを確認します。
- 構造耐力上主要な部分(基礎、壁、柱、土台、梁など)
→ 建物を支える重要な部分で、地震や強風などの外的な力に耐えるための構造です。これらの部位に問題があると、耐震性や安全性が低下する可能性があります。 - 雨水の浸入を防止する部分(屋根、外壁、開口部など)
→ 雨漏りを防ぐための外壁や屋根、窓やドアの周囲などを指します。これらの部位が劣化すると、内部に水が入り込み、建物の耐久性が大きく損なわれることがあります。 - 耐震性に関する書類の確認
→ 物件が建てられた時の耐震基準を確認し、現行の耐震基準に適合しているかどうかを調査します。特に、1981年の新耐震基準や、2000年の現行耐震基準に適合しているかどうかが重要なポイントになります。
ただし、この調査は「品質確保促進法(品確法)」に基づく不具合、いわゆる瑕疵の有無を保証するものではありません。
また、最近では省エネ性能や耐震性について図面に記載されていることが多く、書類では確認しますが、実際の施工がそれらの基準に適合しているかどうかを判定するものではない点にも注意が必要です。
Point
建物状況調査とは
・既存住宅を対象にした、現状の不具合を確認する調査である
・瑕疵の有無を保証するものではない
・省エネ性能や耐震性が図面通りに施工されているかを判断するものではない
建物状況調査を行うメリット・デメリット
建物状況調査は、一般的に買主が物件の状態を確認するために行うものと思われがちですが、実は売主が実施することにも多くのメリットがあります。
以下に建物状況調査を行うことで生じるメリットとデメリットをまとめました。それぞれの立場でどのようなメリット・デメリットがあるのかを見ていきましょう。
建物状況調査を行うメリット
- 買主のメリット
-
<メリット>
・購入前に物件の状態を把握でき、売主と補修や価格交渉がしやすくなる
・物件の劣化状況がわかるため、将来のメンテナンス計画や予算の見通しが立てやすい
・中立な立場の専門家からアドバイスをもらえるPoint
専門家の調査により補修の必要な箇所が明確になることで、補修箇所を絞ることができ、予算を抑えやすい。また、メンテナンスについて具体的なアドバイスを受けられる点も利点である。
- 売主のメリット
-
<メリット>
・調査済み物件としてアピールすることができ、買主に安心感を与えられる
・事前に不具合を把握し、修繕の必要性を判断できる
・事前に生じている不具合に関して共有できるため、売却後のトラブルを回避しやすいPoint
調査済みの物件は、未調査の物件に比べて安心感があるため、購入希望者が検討しやすい。また、事前に不具合を把握し、納得した上で契約するか判断できるため、トラブルが発生しにくい点もメリットである。
建物状況調査を行うデメリット
ここからは、買主・売主双方が事前に理解しておくべきデメリットについて解説します。
- 買主のデメリット
-
<デメリット>
・調査費用がかかる(買主負担の場合)
・目視できる範囲のみの調査となるため、床下や屋根内部の詳細な状態は確認できない
・売主負担の場合、不具合が隠れている可能性があるPoint
通常の建物状況調査では、屋根裏や床下は点検口から覗く程度の簡易的な確認しか行われない点には注意が必要。これらの場所はシロアリの被害や雨漏りなどの問題が発生しやすいため、詳細な調査が必要な場合は、追加の検査を依頼する必要がある。
- 売主のデメリット
-
<デメリット>
・調査費用を負担すると、調査費用分の収益が減る。
・不具合が発見された場合、追加の修繕費用が発生する可能性があるPoint
調査によって重大な不具合が見つかった場合、買主からの値下げ交渉や修繕の要請を受ける可能性が高くなる。売却をスムーズに進めるためには、調査結果を事前に考慮し、適切な対応を準備することが重要である。
ホームインスペクションとはどう違うのか?
ホームインスペクションは、国土交通省が2013年に策定した「既存住宅インスペクション・ガイドライン」に基づく検査です。住宅の劣化状況や不具合を確認するという点では建物状況調査と同じですが、より詳細な診断が可能である点が大きな特徴になっています。
建物状況調査 | ホームインスペクション | |
---|---|---|
目的 | 最低限の範囲で建物の劣化を確認 | より詳細に建物の状態をチェック |
調査範囲 | 目視で確認できる範囲 | 屋根裏・床下進入検査、屋根の詳細調査も可能 |
対象物件 | 既存住宅 | 新築住宅・既存住宅 |
費用 | 約6万円 | 約6万円+追加オプションで7〜8万円 |
ホームインスペクションでは、屋根裏や床下に進入し、目視では確認できない細部まで調査できます。
そのため、建物の状態をより正確に把握することができます。また、調査結果を受けてどこから修繕すべきかなどをホームインスペクターに相談することができるため、将来のメンテナンス計画が立てやすくなります。
特に築年数が古い住宅では、点検口から覗いただけでは見えない場所に雨漏りやシロアリ被害が発生していることも少なくありません。より詳細な診断が可能なホームインスペクションを利用することで、安心感が増すでしょう。
ただし、詳細な調査には費用がかかる点には注意が必要です。屋根や床下の進入調査などオプション料金になっている場合が多く、追加すると総額が10万円以上になることもあります。利用する際は、調査内容が自身の希望に合っているかを確認し、必要な範囲を見極めて検討することが重要です。
建物状況調査の注意点
建物状況調査は、物件の状態を把握し、購入や売却をスムーズに進めるために有効な手段です。しかし、調査の内容や範囲には限界があるため、正しく活用するためにはいくつかの注意点を押さえておく必要があります。
ここからは、建物状況調査を受ける際の注意点を解説します。
調査の範囲を理解する
建物状況調査は、国が定めた範囲内で行われる簡易的な目視調査であり、建物内部のすべてを詳細に検査するものではありません。
調査の対象
・構造耐力上主要な部分(基礎・壁・柱・土台・梁など)
・雨水の浸入を防ぐ部分(屋根・外壁・開口部など)
・耐震性に関する書類の確認
上記の調査以外は含まれないため、床下や小屋裏内部への進入調査、設備機器の動作確認などは実施されない点は理解しておきましょう。
また、品質確保促進法(品確法)に基づく不具合、いわゆる瑕疵に関して有無を保証するものでは無く、図面に記載された省エネ性能や耐震性などについて、現状の状態がそれらに準じて施工されているかに関しても判定は出来ません。
より詳細な診断を希望する場合は、追加の調査やホームインスペクションの利用を検討する必要があります。そのため、ご自身が行いたい調査があれば、最初からホームインスペクションを利用した方が良い場合もあります。
追加調査や補修の費用を考慮する
建物状況調査の結果、不具合が見つかった場合、補修や追加調査が必要になることがあります。特に、雨漏り・シロアリ被害・構造の劣化などが発見された際には、多額の修繕費が発生する可能性が高いため、事前に資金計画を立てておくことが重要です。
また、売買契約が「現状引渡し」となっている場合は、売主が不具合に対して責任を負わず、修繕費用は買主が負担することになります。物件をそのままの状態で購入する必要があるため、事前に修繕費用を見積もった上で購入するか慎重に判断することが重要です。
このように、調査後の補修費用や追加調査の可能性を考慮し、購入前に資金面での準備を進めておくことが大切です。物件の状態に応じて、必要な修繕費や追加調査の費用を十分に確認し、納得した上で契約を進めるようにしましょう。
売主と事前に調整する
建物状況調査を行う際に一番注意すべきなのは、売主との調整です。
買主が建物状況調査を依頼する場合、売主の同意が必要であるため、調査内容や調査結果の扱い、また費用の負担をどうするかについて事前に話し合っておく必要があります。
特に、調査結果を売主にも共有するのか、調査費用はどちらが負担するのかといった点を曖昧にすると、後々トラブルにつながる可能性があります。事前に調査について取り決めを行い、スムーズな取引を進めることが大切です。
Point
以下のポイントについて事前に売主と取り決めておくことで、トラブルを回避しましょう。
□ 調査の同意が得られるか
□ 調査内容や調査結果の扱いをどうするのか(→結果を共有するのか、しないのか)
□ 費用はどちらが負担するのか(例:売主も結果が知りたいから、費用を半分負担するなど)
調査結果の解釈と活用方法を理解する
建物状況調査では、不具合の有無が記録されますが、「問題なし」と判断された場合でも、将来的に劣化のリスクがまったくないとは限りません。そのため、調査報告書を活用し、今後の維持管理計画を適切に立てることが重要です。
調査で不具合が見つかった場合、その程度に応じて適切な対応を検討する必要があります。
軽微な不具合が見つかった場合
→ すぐに修繕の必要はありませんが、将来的なメンテナンス計画を立てることが望ましいです。
重大な不具合が見つかった場合
→ 修繕費用を考慮したうえで、購入や売却の判断を慎重に行うことが求められます。
物件の現状を正しく把握し、長期的な視点でメンテナンスや修繕の計画を検討することで、安心して物件を活用することができます。
調査は行うべきか?
結論から申し上げると、物件を購入する際は調査を実施することを強くおすすめします。住宅は長く住み続けるものですので、事前に状態をしっかり把握しておくことで、安心して暮らすことができるでしょう。
しかし「建物状況調査」と「ホームインスペクション」のどちらを選ぶべきか迷われている場合は、より詳しい診断が可能なホームインスペクションをおすすめします。
ホームインスペクションがおすすめな理由
住宅の安全性を考える上で、耐震基準が非常に重要になります。例えば、1981年に施行された新耐震基準や、2000年の現行耐震基準が適用される前に建てられた物件は、現在の基準を満たしていない可能性があり、構造の劣化や接合部の欠陥が見つかるケースも少なくありません。
また、築年数が経過している住宅では、雨漏りやシロアリ被害などの問題が隠れていることもあります。これらの劣化は、屋根裏や床下の内部に進入して詳しく確認しないと発見できないことが多く、目視だけでは見逃してしまうリスクがあります。
そのため、より詳細な調査内容で不具合も事前に把握でき、安心して購入を検討できるホームインスペクションの活用がおすすめです。
2024年4月の改正について
さらに、2024年4月1日から不動産売買時の「標準媒介契約約款」が改正されました。 この改正により、建物状況調査を斡旋しなかった場合、その理由を明記することが義務化されました。
建物状況調査を行わなかった理由として、例えば、
「仲介業者が調査を斡旋しなかった」
「売主が調査を断った」
といった記録が残るため、購入希望者が不動産の状態をより慎重に検討するきっかけができました。これにより、買主にとっては、より透明性の高い取引が可能になりました。
このように、建物状況調査等で建物の状態をしっかりと確認することの重要性はますます高まっています。「購入後に思わぬ修繕費がかかってしまった」「住み始めてから問題に気づいた」といったトラブルを防ぐためにも、事前の調査をしっかり行い、安心して暮らせる住まいを選びましょう。
まとめ
今回は建物状況調査について、どのような内容なのか、またホームインスペクションとの違いについて解説しました。
簡略的にまとめると、以下のような内容になります。
- 建物状況調査は最低限の確認を行う調査
- 費用はかかるが、購入後のリスクを軽減できる
- ホームインスペクションは、より詳細な診断が可能
建物状況調査では、最低限の目視のみの検査になるので、より確実に瑕疵がないか、構造に問題がないか確認したい場合にはホームインスペクションがおすすめです。また、建物状況調査は一定の調査項目であるのに対して、ホームインスペクションでは会社ごとの特色があります。
ホームインスペクションを利用する際には、自分の気になるポイントをしっかり検査してくれる業者を選ぶことがカギとなります。
住宅購入は大きな決断です。ぜひこのコラムを参考に、安全性の高い建物を探し、納得のいく住まいをご購入ください。
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